環境中微粒子曝露による脳疾患の発症・悪化に関する基礎的検討 - ナノ銀の経鼻曝露による脳内移行性の定量評価 -
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概要
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脳組織は身体の様々な組織を制御する役割を担う重要な器官であり,脳組織に障害を生じた場合には,行動や学習,記憶など,様々な活動に影響が生じ得る。一方で,これまでの疫学的研究により,大気中の微粒子への曝露と様々な疾患リスクとの関連性が示唆されており,微粒子による脳疾患の発症・悪化への関与が注目されている。このような背景のもと,近年のナノテクノロジーの著しい発展に伴い,粒子径100 nm以下のナノマテリアル(NM)や10 nm以下のサブナノマテリアル(sNM)が生活用品や化粧品などに実用化されている。例えば,ナノ銀粒子は優れた殺菌/抗菌作用を発揮するため,既に多くの製品へ利用されている。すなわち,これらのナノ粒子への意図的・非意図的な曝露機会が増大している。従って,意図的・非意図的に曝露し得る環境中微粒子が脳に及ぼす影響を解析することが重要である。そこで,本研究では,製造現場での吸入曝露を想定し,ナノ銀粒子を用いて経鼻曝露後の脳組織への移行量を評価した。BALB/cマウスに粒子径20 nmのナノ銀(nAg),粒子径1 nmのサブナノ銀(snAg)を1週間連続で経鼻投与し,最終投与24時間後に脳組織を回収した。誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いてnAg,snAgの脳組織への移行量を定量的に解析した結果,nAgは脳組織へ移行しないものの,snAgは脳組織へ移行する可能性が示された。現在,脳組織へ移行したsNMの脳機能への影響を精査するために,脳組織の病理解析や神経障害マーカーの発現変動に焦点を当てて評価している。将来的に,これらの情報を基盤としてNM,sNMが脳疾患の発症・悪化に及ぼす影響について検討を行う予定である。
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