HepG2細胞におけるエリスロポエチン産生に対するエタノール添加の影響
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概要
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Erythropoietin(EPO)は赤血球産生の促進に必須なだけでなく,種々の組織でストレスに対する細胞保護作用が報告されている。しかし,有効なEPO産生促進物質は明かではなく,低酸素状態がほぼ唯一のEPO産生促進因子である。低酸素状態では細胞の酸化還元状態(redox)は還元に傾くので,redoxもEPO産生調節に関与する可能性がある。実際,EPO産生調節因子のHypoxia inducible factor(HIF)がredoxの影響を受けることが報告されている。さらに,redoxおよびHIF両方に関与する調節因子にSirtuin 1(Sirt1)が知られている。そこで,代謝時に還元等量を産生しredoxを還元に傾けるエタノールを用いてEPO産生へ及ぼす影響を解析した。EPO産生能を持つHepG2細胞にエタノールを添加して6時間培養し,EPO,HIF-α,Sirt1のmRNA発現量,細胞内HIF-αタンパク量およびEPO産生量を測定した。また過酸化水素投与による酸化ストレスの影響の指標としてmalondialdehyde(MDA)量,superoxide dismutase(SOD)活性,生存率を測定した。HepG2細胞へのエタノール投与は200 μMまではEPO mRNA発現を促進したが,1 mM以上では抑制した。100 μMエタノール添加により,Sirt1 mRNA発現量,細胞内HIF-α量およびEPO産生量は増加した。Sirt1の阻害剤であるEX527を同時に添加するとエタノールによるEPO産生促進効果は消失した。100 μMエタノールを添加したHepG2細胞に過酸化水素を処置すると,無添加に比べて,MDA量は低く,SOD活性,生存率は高くなり,ストレス耐性が増加した。以上の結果から,100 μM程度のエタノールは,Sirt1を介したEPO産生を増加させるとともにストレス耐性を増加させる作用を持つと考えられた。
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