培養液による多層カーボンナノチューブのBEAS-2B細胞におけるバイオレスポンスへの影響
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概要
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【目的】吸入暴露を想定して用いられるヒト気管支上皮細胞BEAS-2Bはナノマテリアルの毒性試験にもよく利用されている。しかし,その結果は研究者によって明らかに異なり,ナノマテリアルの安全性評価に矛盾を与える一因になっていた。そこで我々はBEAS-2B細胞の細胞毒性差を明らかにするために血清入りの培養液(Ham's F12)と無血清培地(SFGM)で多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)の細胞毒性試験を行った。さらに,ヒト正常気管支上皮細胞(HBEpC)でも同様に細胞毒性を調べた。【方法】MWCNTs(保土ヶ谷工業)はMWNT-7(長さ;10 μm,平均径;60 nm)を0.1% gelatinで分散した。BEAS-2B細胞とHBEpCに24時間暴露後,Alamar blue法による細胞毒性,サイトカイン分泌,蛍光顕微鏡による形態観察を行った。さらに,2種類のエンドサイトースインヒビターによる細胞毒性と細胞内取り込みへの影響を調べた。【結果】MWCNTsのBEAS-2B細胞における細胞毒性は培養液中の血清の有無によって明らかに異なった。Ham's F12 で培養したBEAS-2B細胞はMWCNTsを細胞内に取り込むが,SFGMで培養したBEAS-2B細胞はほとんど取り込まなかった。この細胞内取り込みは可逆的反応であり,SFGM で培養したBEAS-2B細胞をHam's F12で培養すると取り込み能が回復した。SFGMで培養したHBEpCはMWCNTsを細胞内に取り込み,Ham's F12で培養したBEAS-2B細胞と同程度の細胞毒性を示し,さらにサイトカイン分泌も亢進した。クラスリン依存性エンドサイトーシスとカベオラ依存性エンドサイトーシスのインヒビターはどちらもMWCNTsによる細胞毒性を抑制した。【考察】BEAS-2B細胞は血清によって扁平上皮細胞に分化すると報告されている。MWCNTsに対する細胞毒性も含めたBEAS-2B細胞の生物応答で,HBEpCを反映しているのは血清入り培地で培養したBEAS-2B細胞であった。MWCNTsによる細胞毒性は血清によって発現が誘導される複数のエンドサイトーシス関連分子が関与していると考えられ,今後,同定を進めていきたい。
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