セレン蓄積性植物におけるテルル代謝物の同定
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概要
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テルルは工業的な有用性から近年我々の生活圏に広く浸透しているが,その毒性や生態系へ与える影響については明らかとなっていない点が多い。本研究では環境中でのテルルの動態を明らかにするため,植物におけるテルルの代謝機構を解明することを目的とした。モデル植物として,テルルと同族のセレンを蓄積することが知られているニンニクを利用した。ニンニクにテルル酸ナトリウムを曝露し,生成したテルル代謝物を同定することで,ニンニクにおけるテルルの代謝経路の解析を行った。代謝物の同定には,HPLCと接続した誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)とESI-MS-MSを用いた。その結果,ニンニクはセレンには及ばないものテルルを蓄積する能力を有することが明らかとなった。また,葉部におけるテルル代謝物の化学形態別分析したところ,曝露した化学形態であるテルル酸以外に少なくとも3つの新規テルル代謝物 (ukTe-1-ukTe-3) が検出された。3つの代謝物のうち,存在量が多く最もマトリクスの影響の少ないukTe-3を葉の抽出液から精製し,HPLC-ESI-MS-MSで分析したところ,このテルル化合物はTe-methyltellurocysteine oxide (MeTeCysO) であると推定できた。実際にMeTeCysOを化学合成して抽出液にスパイクしたものをHPLC-ICP-MSで解析したところ,ukTe-3と保持時間が一致した。従ってニンニク中で見出されるテルル代謝物の一つは,MeTeCysOであることが明らかとなった。ニンニクのような高等植物が無機テルル塩であるテルル酸から有機のテルル化合物であるテルロアミノ酸を生合成可能であることを本研究で初めて示した。さらに環境毒性学的観点から,合金から溶出される無機テルルだけでなく,生態系では有機テルル化合物の毒性も考慮すべきであることを示唆できた。
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