アセトアミノフェン光分解物の同定と水生毒性評価
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概要
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【目的】近年,医薬品による環境汚染が問題となっている。さらに,医薬品は環境動態が明らかとされておらず,環境中において太陽光や環境微生物などの環境因子により変異を受け,毒性を有する物質に変異していることが考えられる。我々はこれまで,河川水などより検出される医薬品の多くが太陽光や紫外線(UVA,B,C)曝露により分解を受け,水生生物毒性が変動することを見出している。本研究では,UVC曝露後に著しい水生生物毒性の発現が認められたacetaminophen (AA)に注目し,その毒性分解物の分離同定を行った。【実験方法】AA水溶液を紫外線(UVA,B,C)に曝露後,Waters OASIS HLBカートリッジで抽出し,分解率をHPLC で測定した。分解物の同定はESI-TOF/MS/MSで行った。水生生物毒性試験(ISO11348)は,海洋発光細菌(Photobacterium phosphoreum)を用いた発光阻害試験で,発光量の減少から毒性(EC50)を測定した。 【結果および考察】AA水溶液に太陽光あるいはUVA, B, Cを各紫外線ランプで照射し,その毒性変動を水生生物毒性試験で評価したところ,AA自体はほとんど毒性を示さないが,UVC 曝露により著しい毒性の発現が認められた。UVC曝露後の抽出液をHPLC で分析したところ,AAより僅かに極性の高い分解物の生成がみられ,曝露時間に相関した生成量の増加が認められた。本分解物をESI-TOF/MS/MSにて構造同定し,1-(2-amino-5-hydroxyphneyl)ethanoneであることを明らかとした。本分解物を合成し,水生生物毒性試験にて評価したところ毒性が認められ,UVC曝露による毒性発現の一因が本分解物の生成であることを明らかとした。
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