イヌにおける1.3-dinitrobenzene単回投与による臓器毒性の病理組織学的検討
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概要
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【目的】染料中間体として広く使用される1.3-dinitrobenezene(DNB)の経口投与により,ラットでは精巣や脳を始めとした種々の器官・組織に障害が惹起されることが報告されているが,イヌに関する報告は少ない。今回,DNBをイヌに単回経口投与し,経時的に全身臓器の病理組織学的検査を行い,ラットとの種差についても検討した。【材料及び方法】約2歳齢の雄ビーグル7匹を用いて,25 mg/kg単回経口投与後6時間,1,4,14,28及び77日に各1匹剖検し,10%中性緩衝ホルマリン液で固定後,常法に従い,HE,ベルリン青及びGFAP免疫染色標本を作製し病理組織学的に評価した。なお,投与後77日剖検時に対照として無処置のビーグル1匹も併せて剖検した。【結果及び考察】一般状態では投与後4時間から嘔吐やチアノーゼ等がみられ,これら症状は投与後4日には消失した。肉眼所見では,肝臓及び脾臓の黒色化が投与後28日まで観察された。病理組織学的検査では,投与後6時間では著変はなかったが,投与後1日より肺,肝臓及び脾臓のうっ血が,投与後4日より肝クッパー細胞,腎尿細管上皮及び脾臓の黄褐色色素沈着,腎尿細管上皮の好塩基化,脾臓の髄外造血亢進が,投与後14日より肺の肉芽腫及び巣状線維化が,投与後28日より大脳髄質の血管周囲性単核細胞浸潤,血管増生,スポンジ様変性及び軟化巣がみられた。黄褐色色素はベルリン青陽性を示し,投与後28日よりみられた大脳髄質の病変部周囲にはGFAP免疫染色で肥大したastrocyteが認められた。以上の結果より,DNBを25mg/kgでイヌに単回経口投与した際,投与後1日から肺,肝臓,脾臓及び腎臓に様々な障害が発現し,投与後28日ではさらに遅発性の脳障害が出現することが示唆された。今回の検討ではラットでみられる精巣障害は明らかでなく,また,脳障害部位に相違がみられた。
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