胎仔期・授乳期の低用量水酸化PCB曝露が成熟後仔マウスへ及ぼす影響
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概要
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発達期の脳は非常に脆弱であるため,この時期の環境化学物質の曝露によって,子どもの脳発達に影響を及ぼし,さまざまな異常を引き起こすことが示されてきた.初代培養系を用いたこれまでの研究から,4-hydroxy-2',3,3',4',5'-pentachlorobiphenyl(水酸化PCB)曝露が小脳プルキンエ細胞の樹状突起の伸長に影響を及ぼすことが報告されている(Kimura-Kuroda et al., 2007).しかし低用量水酸化PCBの周産期曝露によって仔の小脳機能の発達にどのような影響を及ぼすかはあまり分かっていない.本研究では,胎仔期または授乳期に水酸化PCBを曝露したマウスを用いて,ロータロッド試験によって運動協調機能を検証し,水酸化PCB曝露が小脳機能に影響を及ぼすかについて検討した.胎仔期曝露条件では,妊娠したC57BL/6Jマウスに,コーン油に溶解した水酸化PCBを0.05または0.5 mg/kg b.w.の濃度で,妊娠10日目から18日目まで1日おきに投与した.授乳期曝露条件では,母獣にOH-PCB 106を0.05または0.5 mg/kg b.w.の濃度で,出産後3日目から13日目まで1日おきに投与した.これらの母獣の雌雄仔が成熟後にロータロッド試験を行なった.その結果,いずれの曝露条件においても,母獣の体重変化には影響がなかった.胎仔期曝露条件における産仔数や授乳期曝露による仔の死亡率も対照群と比べて有意な差はなかった.ロータロッド試験では,授乳期0.05 および0.5 mg/kg b.w.曝露群の雄仔において,試験の成績が対照群と比べて有意に低下した.このことから,水酸化PCBの曝露は,仔の小脳機能発達に影響を及ぼすことが示された.また水酸化PCBの曝露影響は,曝露時期や性によって異なることが示唆された.
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