ダイオキシン経母乳曝露による新生仔水腎症発症の原因遺伝子microsomal prostaglandin E2 synthase-1の誘導におけるマウス系統差について
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概要
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はじめに: ダイオキシン毒性の決定因子であるAhRについて、マウスでは高応答性のAhRb1やAhRb2がある。AhRb1とAhRb2のTCDDとの解離定数は同一であり、転写活性化能にも差はないと報告されている。我々は、COX-2、ならびにPGE2を合成する酵素のmicrosomal prostaglandin E2 synthase-1 (mPGES-1)がダイオキシン経母乳曝露による新生仔水腎症発症の必須因子であること、AhRb1を持つC57BL/6とAhRb2を持つBALB/cにおいて水腎症発症率が異なることを報告してきた。今回はこれら2系統を比較し、水腎症発症に関与する因子を検索した。 方法: C57BL/6とBALB/cマウスを用いた。出産1日目に母マウスにTCDD を15 μg/kgの用量で単回経口投与し、新生仔にTCDDを経母乳曝露した。7日齢雄性仔の腎を用いて組織学解析・遺伝子発現解析・クロマチン免疫沈降法による転写因子結合量解析を行った。 結果: TCDD曝露によるCYP1A1とCOX-2 のmRNA発現量はC57BL/6とBALB/cのマウスで同様だったが、水腎症発症率は前者で67%、後者で0%であった。一方、C57BL/6Jで顕著に上昇したmPGES-1 mRNAはBALB/cでは増加しなかった。mPGES-1の転写誘導因子であるearly growth response 1 (Egr-1)について、mRNA量とmPGES-1プロモータ領域への結合量がC57BL/6でのみ曝露により増加した。結論: 2系統におけるTCDD曝露による新生仔水腎症の発症率の相違は、mPGES-1転写誘導の感受性差に起因し、mPGES-1転写誘導因子Egr-1の応答性の差が影響することが示唆された。
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