発生~発達期マウスへの低用量ビスフェノールA暴露による遅発中枢影響解析
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概要
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個体の発生期~発達期には,脳の基本構造と共に神経活動により神経回路が形成される時期である。従って,この時期の化学物質暴露による神経活動のかく乱は,成熟後の異常行動の原因となる異常な神経回路形成を誘発する蓋然性がある。性ホルモン受容体を介したシグナル伝達は,中枢神経系の発達にも深く関与していることから,内分泌かく乱化学物質が,生殖内分泌系のみならず,中枢神経系をも標的としていると考えられる。その中でもビスフェノールA(BPA)は,発生・発達期における中枢神経系への安全性の確認が必要とされている。しかしながら,これまで多くの報告があるものの,その毒性学的な位置づけは不明瞭である。これまで我々は暴露タイミング,情動・認知行動解析,及び神経科学的物証の収集の最適化により,遅発性中枢神経毒性の発現メカニズム解析と効率的な検出システムの構築を進めてきた。今回,我々は低用量のBPAの早期暴露による遅発中枢影響について報告する。交配から妊娠出産を経て離乳に至るまでのB6マウスに,0,0.06,1,15ppmのBPAを飲水投与し,生後12-14週齢の雄マウスにバッテリー式の行動解析を行った。その結果,BPA暴露群に,オープンフィールド試験及び高架式十字迷路試験から不安関連行動異常が,さらに条件付け学習記憶試験から短期記憶形成不全に対応すると考えられる軽度学習障害が認められた。また形態学的解析からBPA暴露群海馬に神経細胞突起動態影響が認められた。こうした海馬の遺伝子発現様式をPercellome法によって解析した結果,用量依存的に遺伝子発現抑制傾向が認められ,パスウエイ解析から海馬神経細胞の軸索機能影響が疑われた。さらにBPA暴露群海馬にエピゲノム影響が生じていることが示された。今後,こうした遅発影響の毒性学的位置づけについて検討したい。(厚生労働科学研究費補助金による。)
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