ナノ材料の噴霧曝露後,長期間経過して発生するリスクの背景となる肺組織の検索
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概要
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ナノ材料の吸入曝露のリスクにおいてもアスベストと同様に,曝露後長期間を経て発生する健康被害が危惧されている。我々は,噴霧曝露後,長期間経過して発生するリスクを検索する目的で,噴霧直後および長期間経過した時点のそれぞれにおいて,肺における炎症反応,誘導されたマクロファージの数およびそのタイプの変化を検索した。日機装製単層および多層カーボンナノチューブ(SWCNT-N, MWCNT-N),三井製多層カーボンナノチューブ(MWCNT-M)およびアスベストであるクロシドライト(CRO)を,250ug/mlの濃度で生理食塩水/0.05%Tween20に懸濁し,10週齢の雌SDラットに肺内噴霧ゾンデを用いて1回あたり0.5ml噴霧した。9日間に合計5回噴霧し,最終噴霧から6時間後および30日後に屠殺剖検し肺を組織学的に検索した。 噴霧直後の肺組織では,いずれの群でも多数のマクロファージが比較的強い炎症を伴う像が観察されたが,噴霧後30日経過すると,SWCNT-NおよびMWCNT-Nでは異物反応が遷延していたが,他の噴霧群では炎症性変化はほとんど観察されなかった。肺野に誘導されたCD68陽性マクロファージの数は,いずれの噴霧群でも曝露後30日経過した時点では曝露直後の40%-60%にまで減少した。M2型マクロファージであるCD204陽性マクロファージの数は,いずれの噴霧群でも,噴霧直後では多数誘導されていたが,噴霧後30日経過した時点では対照群のレベルにまで減少した。CRO群のみ,噴霧直後にIL-1β陽性マクロファージが多数観察されたが,30日経過した時点ではほとんど観察されなかった。これらの結果から,曝露直後と曝露後長期間経過した時点では,被研物質によってマクロファージの反応は大きく異なり,曝露直後のリスク評価のみならず曝露後長期間経過した時点でのリスク評価の必要性が示唆された。
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