サブナノ白金の母乳移行性に関する安全科学的検討
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概要
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粒子径を10 nm以下に制御したサブナノ素材(サブナノマテリアル:sNM)の,医薬品,食品,化粧品などの薬学領域における応用研究,実用化が進展している。そのため,老若男女,妊婦・授乳婦を問わず,sNMに曝露され得る現状にあり,様々な年齢,健康状態におけるsNMの安全性情報の収集が重要課題とされている。しかし,胎児・乳幼児など,脆弱な個体を対象とした安全性評価研究はほとんど進展していない。本観点から我々は,食品分野を中心に既に実用化されているサブナノ白金(snPt)を用いた,「こどもの安全科学」研究を先駆けて推進し,snPtの授乳期曝露が新生仔の発育不全を誘発する可能性を見出している。そこで本発表では,母乳を介した新生児への影響をより詳細に評価する目的で,snPtの母乳移行性について検討した。授乳期のマウスに,粒子径8nmおよび1nmのsnPt(snPt8,snPt1)を静脈内投与した。投与12時間後に母乳を回収し,誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により,回収した母乳中に含まれる白金量を測定した。その結果,対照群の母乳中に白金が検出されなかった一方で,snPt8投与群,snPt1投与群の母乳中に,それぞれ投与量の少なくとも0.007%,0.24%に相当する白金が検出された。このことから,今後より詳細な検討が必要ではあるものの,snPt8,snPt1が血中から母乳中に移行すること,新生仔が母乳を介してsnPt8,snPt1に曝露し得ることが示唆された。今後は,母乳移行量の経時的変化,投与濃度依存性,母乳成分に与える影響を評価する予定である。さらに,snPtの母乳中の局在や存在形態について検討し,Sustainable nanotechnology(sNMの社会受容の促進)に資する情報を収集していく予定である。
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