非晶質ナノシリカの妊娠期曝露が仔の情動機能へ及ぼす影響探索
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概要
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本邦において,自閉症,学習障害,注意欠陥多動性障害などに罹患する子供は増加の一途を辿っている。一方で近年,妊娠期の環境物質曝露が,子の脳機能異常を誘発する例が報告されており,我々を取り巻く環境物質と,子供の脳機能異常との因果関係を解明していくことが重要課題である。本観点から我々は,実用化が進展しているナノマテリアル(NM)と,子供の脳機能異常との因果関係に着目し,Sustainable Nanotechnology(NMの社会受容の促進)に資する情報の収集を目指した,「こころの安全科学」研究を推進している。その結果,高用量を静脈内投与したハザード同定であるものの,70nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)の妊娠期曝露が,胎仔発育不全を誘発する一方で,仔の記憶機能には影響を与えないことを明らかとし,昨年の本会でも報告している。我々は現在,記憶にとどまらず多岐に渡る脳機能を網羅的に解析しており,本演題では,nSP70を妊娠期曝露した仔の情動機能を評価した結果を発表する。妊娠16,17日にnSP70を静脈内投与されたマウスの仔について,高架式十字迷路により不安様行動を,強制水泳テストと尾懸垂テストによりうつ様行動を評価した。その結果,高架式十字迷路と強制水泳テストにおいて,群間のスコアに有意な変化は認められなかった。一方で,尾懸垂テストにおいて,nSP70を曝露したマウスの仔の活動量が対照群と比較して有意に減少したことから,今後より詳細な検討が必要であるものの,nSP70の妊娠期曝露が,仔のうつ様行動を亢進する可能性が示された。NMが次世代の脳機能に与える影響を評価した例は乏しいことから,本結果はNMの安全性確保の側面のみならず,環境物質とこころの問題における新知見と考えられる。今後は,実際の曝露経路を加味し閾値を追求すると共に,本現象のメカニズム解明を進める予定である。
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