食品中ナノマテリアルの安全性確保に向けた腸内細菌叢への影響解析
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概要
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近年,ユッケ食中毒事件といった食の安全を脅かす事件が多発しており,食の安全・安心の確保はますます待望されている。特に,その有用性から,1次元が100 nm以下のナノマテリアル(NM)の食品分野への応用が進んでいるが,NMの安全性評価はまだ始まったばかりであり,より詳細に取り組んでいく必要がある。本観点から我々は,食品に含まれるNM(食品NM)の安全確保を目標に,食品NMのハザード同定や体内動態解析をはじめとしたナノ安全科学研究を推進している。特に,腸内細菌が肥満・免疫機能を制御し得ることが判明しつつあることを考慮すると,食品NMの安全性を評価するうえで,一般毒性学的解析のみならず,腸内細菌叢に対する影響評価も重要なポイントになると考えられる。そこで本検討では,食品NMの中でも最も汎用されている非晶質シリカを用い,経口投与後の一般毒性と腸内細菌叢への影響を解析した。本検討では,1次粒子径が1000,300,70,30 nm,およびカルボキシル基・アミノ基で表面修飾された1次粒子径が30 nmの非晶質シリカを用いた。これら物質をBALB/cマウスに28日間経口投与した後,血球検査・血液生化学検査を実施すると共に,腸内細菌叢の組成をT-RFLPにより解析した。その結果,一般毒性学的な影響は認められない一方で,粒子径が70 nm以下の非晶質ナノシリカ投与群では,Lactobacillalesの割合が有意に減少していた。Lactobacillalesに属する菌は,腸炎発症を予防することが報告されており,今後は,炎症性腸疾患といった炎症性疾患の発症・悪化に食品NMがおよぼす影響を評価する必要があると考えられる。また現在,腸内細菌叢の絶対数や,腸内細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸などを測定し,より多方面から腸内細菌叢を解析している。
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