遺伝的背景に着目したナノマテリアルの生体影響探索
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概要
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ナノマテリアル(NM)が,未だ多くの知られざる生体影響を有していることは疑いようのない事実であり,安全性確保や有効活用に向けて,その全貌の解明が待望されている。一方で,化学物質の生体影響は,実験動物の系統間で大きく異なることは周知の事実であり,その安全性評価においても遺伝的多様性を考慮することは必要不可欠である。しかし,遺伝的背景を考慮したNMの生体影響を評価した検討は未だ皆無に等しい。さらに,多系統の実験動物を用いた検討は,NMによる新たな生体影響の発見や,生体影響発現メカニズムの解明においても極めて有効な手法になると考えられる。そこで本検討では,粒子径70 nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)を高用量投与することで誘導される急性毒性に焦点を絞り,様々な系統のマウスを用いて生体影響を比較解析した。異なる5系統のマウス(BALB/c,C57BL/6,NC/Nga,C3H/HeN,C3H/HeJ)にnSP70を尾静脈内投与し,経時的に体温を測定すると共に,投与から24時間後に生化学試験を実施した。その結果,NC/Nga,C3H/HeN,C3H/HeJにおいては,一過性の体温低下が観察されたのに対して,BALB/c,C57BL/6においては体温変化が認められなかった。さらに,NC/Ngaでは肝障害マーカーの有意な上昇が認められると共に,体温低下が誘導されなかったBALB/cにおいても,その有意な上昇が認められた。以上の結果は,マウスの系統により急性毒性の発現が異なり,NMの有する未知の生体影響を解析するには,単一系統のマウスのみを用いた検討では不十分であることを示している。一方で,この事実は逆に,NMによる未知の生体影響を解明するうえで,本手法が極めて有効であることを示唆している。今後,本手法を用いた検討から得られる情報と,各実験動物における遺伝情報との統合が,NMによる生体影響の機構解明に繋がる事を期待する。
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