エルロチニブによる皮膚毒性
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概要
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分子標的薬は予期せぬ副作用を有する場合もある。これらの副作用に関しては,標的分子以外の分子を阻害することにより生ずる,いわゆるoff-target効果に基づく例が報告されている。演者らは,toxico-dynamics解析により,分子標的薬の副作用発症原因となるキナーゼを同定してきた。本シンポジウムではエルロチニブによる皮膚毒性について述べる(Yamamoto et al., Mol Pharmacol 80: 466-75, 2011)。エルロチニブはEGFRチロシンキナーゼを標的とし,非小細胞肺癌治療薬として用いられるが,皮膚障害が発症する。演者らは,同じくEGFRチロシンキナーゼ阻害剤となるゲフィチニブとの比較検討を進めた。臨床濃度におけるキナーゼ阻害率を,Karamanら(Nat Biotech 26: 127-32, 2008)によるKd値をもとに算出したところ,エルロチニブにより強く阻害されるものの,ゲフィチニブによる阻害が弱いキナーゼとしてSTK10(serine/threonine kinase 10)が同定された。STK10はリンパ球に発現し,IL-2分泌抑制効果,リンパ球遊走抑制効果を有する。種々検討により,エルロチニブによりSTK10が阻害された結果,IL-2分泌およびリンパ球遊走が促進され,これらの効果がEGFRチロシンキナーゼ阻害による皮膚障害発症を増強する可能性が示された。エルロチニブのSTK10とEGFRチロシンキナーゼに対するKd値の間には乖離があり,適切な投与設計により副作用を軽減しながらの治療が可能となるものと考えられた。また医薬品開発段階におけるtoxico-dynamics解析により,off-target分子の同定,副作用予測が可能となることが示唆された。
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