<I>gpt</I> delta ラットを用いた遺伝毒性および肝発がん性の包括的評価によるフラン誘発肝発がん機序の検索
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概要
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【目的】フラン(FR)は,香料として使用されるFR誘導体の基本骨格であり,げっ歯類の肝臓で発がん性が認められている。しかし,その機序は未だ明らかではない。今回,レポーター遺伝子導入動物であるgpt deltaラットによる遺伝毒性・発がん性包括的評価法を用いて,FRの肝発がん機序について検討した。【方法】雌雄7週齢のF344系 gpt deltaラット各群10匹に,FRを,0,2,8 mg/kgの用量で13週間強制経口投与(週5回)した。In vivo遺伝毒性として,肝臓のレポーター遺伝子変異解析および骨髄における小核試験を行った。発がん性の評価はGST-P陽性肝細胞巣の定量解析により行い,病理組織学的検索ならびにreal time RT-PCR法による細胞周期関連因子のmRNA発現解析をあわせて実施した。【結果】小核試験では,雄の最高用量群で小核出現頻度の有意な増加が認められたが,レポーター遺伝子変異解析の結果,変異頻度の上昇は認められなかった。病理組織学的検索では,雌雄ともに2 mg/kg以上で胆管増生,卵円形細胞の増殖が認められ,雄の2 mg/kg以上および雌の8 mg/kgにおいて胆管線維症が認められた。また,雌雄の8 mg/kg投与群でGST-P陽性肝細胞巣の有意な増加が認められ,細胞周期促進因子であるCyclin D1あるいはE1のmRNA発現の有意な増加が認められた。【考察】In vivo小核試験では,雄において陽性の結果が認められ,FRの染色体異常誘発性が示唆された。しかし,発がん性は雌雄に認められること,標的臓器肝臓でのin vivo変異原性は陰性であったことから,FRの肝発がん機序に遺伝毒性メカニズムは関与していない可能性が考えられた。また,病理組織学的に肝障害を示唆する変化が用量相関性に認められ,発がん用量で細胞周期関連遺伝子のmRNAレベルの上昇が観察されたことから,代償性の細胞増殖の亢進がFRの肝発がんを促進する一因であることが考えられた。
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