肝発がんにおけるDNAメチレーションと遺伝子発現の関連
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概要
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【背景・目的】我々は第39回日本毒性学会学術年会において,二段階肝発がんモデルラットにおける網羅的DNAメチレーション解析について報告した。今回さらに,イニシエーター及びプロモーターとしてnitrosodiethylamine(DEN)とphenobarbital(PB)を用いたラット肝臓について詳細な解析を進めたので報告する。 【方法】ラット(Crl:CD (SD)IGS;6週齢)にDEN 30 mg/kgを2週間反復経口投与し,2週間休薬後にPB 500 ppm飲水投与を開始した。PB投与1週間の時点で肝部分切除を行い,6週間後に解剖を行った。肝切除時および解剖時に採材した肝臓のゲノムDNAを採取し,超音波による断片化後,MBD2タンパクによるメチル化DNAの分画を行った。続いて,Life technologies社のSOLiD4を使用してシーケンス及びマッピング解析を行った。メチレーションに変動が認められた領域はAvadis NGSを用いて検索した。また,GeneChipによる網羅的遺伝子発現データを取得した。 【結果・考察】網羅的DNAメチレーション解析の結果,DENによるイニシエーションを実施した動物では,部分切除肝(プロモーション開始1週間目)でゲノム全体のメチル化亢進傾向,最終剖検時肝(プロモーション6週間)で低メチル化傾向が認められた。プロモーション初期にメチレーションの変化があった遺伝子に関連するパスウェイと後期に発現変動が認められた遺伝子に関連するパスウェイは,主に発がんに関連するものであった。同様に,プロモーション初期にメチレーションの変化を伴い後期に遺伝子発現に変化が認められた遺伝子(38 probesets)を用いて,TGP2で取得された遺伝子発現データの階層的クラスタリングを行ったところ,発がん物質やそのポテンシャルを持つと考えられる物質が特異的にクラスターを形成した。さらに,同遺伝子を用いて感度90%,特異度95%となる発がん物質予測モデルが構築できたことから,プロモーション初期に生じたDNAメチレーションの変化は,発がんにつながる遺伝子発現の変化の起点となっていることを示唆していると考えられた。
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