NNKによるヒストン修飾変化とCYP2A6/2A13による代謝活性化との関連性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
4-(Methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone(NNK)は,たばこ煙中の主要な発がん性物質として知られている。肺組織においてCYP2A6/2A13で代謝されることによりDNA付加体を形成し,遺伝子突然変異を誘発することが発がんの原因とされる。これまでNNKの発がん性評価についてはDNAの損傷に基づくジェネティックな変化を中心に検討が行われてきた。一方,近年,化学物質によるエピジェネティックな変化が注目されており,中でもヒストン修飾変化は遺伝子の発現制御を撹乱するため,発がんに関与すると考えられている。しかしNNKによるヒストン修飾変化は知られていない。そこで本研究ではNNKによるヒストン修飾変化について明らかにするとともに,CYP2A6/2A13による代謝活性化の関与について検討した。ヒト肺胞上皮細胞A549にNNKを作用し,一定時間後にウェスタンブロット法及び免疫染色法によりヒストン修飾を検出した。細胞の分裂促進やproto-oncogeneの発現に関与するヒストンH3(Ser10)のリン酸化,クロマチン構造変化による遺伝子発現制御に関与するヒストンH3のアセチル化(global, Lys9, Lys14),トリメチル化(Lys4),そしてDNA損傷修復マーカーであるヒストンH2AX(Ser139)のリン酸化(γ-H2AX)の誘導が時間依存的に認められた。これらの結果は,NNK がDNA損傷を誘導する発がんイニシエーターとしての作用と,ヒストン修飾を介し,遺伝子発現を変化させる発がんプロモーターとしての作用の両方を併せ持つことを示唆していた。次に,ヒストン修飾誘導におけるNNKの代謝活性化との関連性を検討したところ,代謝酵素CYP2A6/2A13を高く持つと報告されているMCF-7,HepG2細胞ではA549細胞と同様に時間依存的なヒストン修飾が認められた。一方,代謝酵素の発現が低いと報告されている皮膚細胞G361,HSC-1ではH3のアセチル化,γ-H2AXの誘導時間が遅延することから,NNK代謝体がヒストン修飾誘導を変化させ,遺伝子発現制御を撹乱させる可能性が示唆された。現在,代謝酵素欠損細胞,過剰発現細胞を構築し,代謝酵素の関与を詳細に検討中である。
- 日本毒性学会の論文
日本毒性学会 | 論文
- Distribution of ^C-2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin to the brain and peripheral tissues of fetal rats and its comparison with adults
- TERATOLOGICAL STUDY OF 4-ETHOXY-2-METHYL 5-MORPHOLINO-3(2H)-PYRIDAZINONE (M73101) IN MICE AND RATS
- NEUROFILAMENT HYPERTROPHY INDUCED IN THE RABBIT SPINAL CORD AFTER INTRACISTERNAL INJECTION OF ALUMINUM CHLORIDE.
- Sodium dodecyl sulfate and sodium dodecyl benzenesulfonate are ligands for peroxisome proliferator-activated receptor γ
- Effects of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) on an aquatic ecosystem : acute toxicity and community-level toxic impact tests of benzo〈a〉pyrene using lake zooplankton community