マルチプレックスイムノアッセイによるラット肝障害時のサイトカイン変動解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【背景】サイトカインは免疫応答や炎症に関与する生理活性物質であり,肝障害において重要な役割を果たしていることが知られている.今回我々は,トキシコゲノミクスプロジェクトで実施した各種のラット毒性試験で採取した肝臓を用いて,サイトカインのタンパク質発現を網羅的に測定し,肝毒性発現とサイトカイン変動の経時変化を詳細に解析した.さらに,炎症と関連して発現変動するサイトカイン関連遺伝子に着目して,マーカーとしての有用性を評価した.【方法】6週齡の雄性Crl:CD (SD) ラットに20種類の化合物を単回あるいは反復投与 (対照群及び高用量群の2群) し,4時点 (6 h, 24 h, Day 4, Day 8/15/29) で採取した肝臓を用いて,30種類のサイトカイン値を測定した.測定したサイトカイン値を各時点の遺伝子発現値や病理毒性情報と比較して,mRNAとタンパク質発現の相関性並びに肝毒性発現とサイトカイン変動の関連性を解析した.【結果】種々の化合物投与による肝臓の壊死や炎症の経時的推移に,様々なサイトカインが密接に関連していることを確認した.mRNA・タンパク質の相関解析において,多くのサイトカインは低い相関性を示したものの,IL-1αやMCP-1/CCL-2 は比較的高い相関性 (Spearman相関係数:順に0.550,0.457) を示した.次に,mRNAとタンパク質間の相関性が高いサイトカイン遺伝子と,変動が相関する遺伝子群を選抜した結果,肝臓の炎症性変化に関連してこれらの遺伝子に発現変動が認められた.【結論】GeneChipにより得られる網羅的遺伝子発現データに基づいて肝毒性評価を実施する際,サイトカイン遺伝子に関しては,mRNA変動とタンパク発現が一致しない可能性があることを考慮した上で,データを解釈する必要があると考えられた.今回,mRNAとタンパク質間の相関性を確認できたサイトカイン遺伝子をベースに選抜した遺伝子群は,肝の炎症性変化を検出する上で,優れた指標になることが示唆された.
- 日本毒性学会の論文
日本毒性学会 | 論文
- Distribution of ^C-2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin to the brain and peripheral tissues of fetal rats and its comparison with adults
- TERATOLOGICAL STUDY OF 4-ETHOXY-2-METHYL 5-MORPHOLINO-3(2H)-PYRIDAZINONE (M73101) IN MICE AND RATS
- NEUROFILAMENT HYPERTROPHY INDUCED IN THE RABBIT SPINAL CORD AFTER INTRACISTERNAL INJECTION OF ALUMINUM CHLORIDE.
- Sodium dodecyl sulfate and sodium dodecyl benzenesulfonate are ligands for peroxisome proliferator-activated receptor γ
- Effects of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) on an aquatic ecosystem : acute toxicity and community-level toxic impact tests of benzo〈a〉pyrene using lake zooplankton community