神経細胞運動の動き解析による可視化と機能評価の可能性
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概要
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【目的】創薬における非侵襲かつ簡便な安全性・毒性評価を目指した新たな手法として,我々はこれまでに動きベクトル検出技術(Motion Vector Prediction method: MVP法)を提案し,培養心筋細胞の拍動解析への応用を本学会でも報告してきた。今回,本手法を発展させて神経細胞の動きを解析した結果,従来明らかにされてこなかった神経細胞の微小運動を可視化でき,薬剤応答において細胞機能との関係性が得られたので報告する。【方法】培養したiPS由来神経細胞の動画像を2~38 fpsで数分間にわたり撮影し,MVP法を用いて神経細胞の運動を解析した。得られた神経細胞の運動は,動き量や振動周波数の観点から時間毎,細胞の領域毎に定量化し,動画像に重ねる形で可視化した。更に,Ca2+チャネルブロッカーやアルツハイマー病に関連して細胞毒性を有するA・ペプチド,生理活性物質であるGABA等の薬剤応答に対して手法の効果を検証した。並行してFluo8を用いて細胞内Ca2+振動を蛍光観察した。【結果】神経細胞は0.1~1Hz程度の低周波のゆらぎを有して運動していることが確認された。また,ゆらぎ成分が細胞体と樹状突起,細胞の形態変化前後で異なることも明らかになった。薬剤応答に関しては,Ca2+チャネルブロッカーやA・ペプチドによる濃度依存的な動き量の抑制,GABA添加におけるゆらぎ変化が示された。チャネルブロッカーや蛍光観察による検討から,神経細胞運動のCa2+振動や他イオン電流の関与が示唆される。【考察】神経細胞は微小なゆらぎを有して運動しており,その動きと機能には関係性があることが確認された。動きの機序や機能との対応については議論の余地を残すものの,神経細胞の評価に対して動き解析が有用である可能性が示されたと考えている。今後,創薬における毒性試験等への応用へ向けて詳細な検討をしていきたい。
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