拘束ストレス負荷における自発運動抑制作用の性差と脳由来神経栄養因子の関与
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概要
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【目的】過剰なストレスは様々な疾病の原因となり得るが,その一例としてうつ病が知られている。うつ病の罹患率には性差があり,年齢に関係なく男女比は1対2で女性患者が多い。うつ病の発症においては,近年,過剰なストレスに伴う海馬の脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少が注目されているが,性差に関する情報は不足している。そこで我々は,拘束ストレスによりマウスに過剰なストレス負荷を与え,海馬BDNF発現量および自発運動の変化に性差が存在するか検討した。【方法】雌雄ICR系マウス(6週齢)を用い,通気性を確保した直径30 mmのプラスチック製円筒容器内にて,1日3時間,5日間連日拘束ストレス負荷を与えた。また,回転かご式自発運動量測定装置を用い,夜間16時間(17:30-09:30)の自発運動量を,回転数を指標に測定した。最終拘束ストレス負荷直後に血液,副腎および脳を採取し,さらに脳から海馬を分画した。血中コルチコステロン値をHPLCにて,また海馬BDNF及びBDNF受容体(TrkB)のmRNA発現量をReal-time PCR法にて測定した。【結果・考察】雌性マウスではストレス負荷群の自発運動量は無処置群と比較し有意に減少したが,雄性マウスにおいては自発運動量の減少傾向を示すに留まった。また,ストレスの指標となる血中コルチコステロン値は,雌雄共に無処置群に比較してストレス負荷群で有意に上昇したが,雌性マウスは雄性マウスに比較して高値を示した。本モデルにおける海馬BDNF mRNA発現量を解析したところ,雌性マウスにおいてはストレス負荷群で有意に減少していたが,これに反し雄性群ではストレス負荷群で増加傾向を示した。以上の結果より,拘束ストレスにより過剰なストレス負荷を与えたマウスの自発運動量の低下および,海馬BDNF発現量の低下は雌性マウスで顕著であり,ヒトのうつ病にみられる性差と同様の傾向が確認された。
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