母動物へのmethylnitrosourea単回腹腔内投与によるマウス児動物海馬歯状回のニューロン新生に対する影響
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概要
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【はじめに】Methylnitrosourea(MNU)はDNA損傷により細胞増殖を阻害するアルキル化剤であり,マウスに発達期暴露することで小頭症が誘発される。本研究ではマウスの海馬形成期での母動物を介したMNUの単回暴露を行い,児動物の海馬歯状回のニューロン新生への影響を検討した。【実験方法】妊娠14日の雌ICRマウスにMNUを5ないし10 mg/kg体重の用量で単回腹腔内投与し,生後21日目及び77日目に児動物の脳を採取した。【結果】生後21日,77日共にMNU投与の両群で脳重量と海馬歯状回の大きさが有意に低下した。生後21日に歯状回顆粒細胞層下帯(SGZ)でtype-2b前駆細胞から未熟顆粒細胞のマーカーであるdoublecortin(DCX)陽性細胞数が投与両群で有意に減少し,アポトーシス指標のTUNEL陽性細胞数が10 mg/kg群で有意に減少した。Type-1前駆細胞のマーカーであるGFAP陽性細胞,Type-2b~Type-3前駆細胞のマーカーであるTbr2陽性細胞の数は変動しなかった。また,歯状回門においてreelinないしparvalbumin陽性GABA性介在ニューロン数が生後21日に10 mg/kg群で有意に増加した。SGZ及び歯状回門における変動は,生後77日には認められなかった。【考察】海馬歯状回の形成開始が胚15日齢であることから,脳室下帯からSGZに移動する前駆細胞の傷害による減数によって,海馬歯状回の縮小が生じたと示唆された。また,MNU投与による前駆細胞への傷害がapoptosisまたはDNA修復機構の活性化を引き起こし,生後21日に未熟顆粒細胞の減数と共に残存細胞のアポトーシスの減数が生じていることが推測された。歯状回門部のreelin及びparvalbumin陽性介在ニューロンの増数は,MNUによる顆粒細胞系譜の分化及び移動障害に対する修復・保護作用を反映したものであることが示唆された。しかし,以上の変化は生後77日には認められず,持続的な傷害ではないことが示唆された。
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