核内受容体PXRによるマウス肝細胞の細胞周期調節機序
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概要
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核内受容体pregnene X receptor (PXR)およびconstitutive androstane receptor (CAR)は,肝に高発現し,生体異物に応答して異物除去など様々な生理機能を制御する転写因子である。CARの活性化はまた,肝細胞増殖や肝発がんと関連しており,このことが化学物質の安全性評価においてしばしば問題となる。最近我々は,PXRの活性化は単独では肝細胞増殖作用を示さないものの,CAR活性化薬や核内受容体PPARα活性化薬による肝細胞増殖を増強することを見出した(第39回日本毒性学会学術年会)。本研究では,この分子機序を明らかにするために,マウス肝細胞の細胞周期調節におけるPXRの機能を解析した。C57BL/6系雄性マウスにPXR活性化薬物であるpregnenolone 16α-carbonitrile (PCN; 100 mg/kg)を腹腔内投与し,その肝臓を試料として用いた。投与48時間後の肝細胞をコラゲナーゼ灌流法により分離し,propidium iodideによるDNA染色またはPyronin Yおよび7-aminoactinomycin DによるDNA/RNA二重染色を利用したフローサイトサイトメトリー法により細胞周期を解析した結果,PCN投与に伴う肝細胞のG0期からG1期への移行が確認された。また,G0/G1トランジションに関連する遺伝子のmRNAレベルを定量的逆転写PCR法により測定したところ,PCN処置24時間後において,Rbl2 (p130)とその転写調節因子をコードするFoxo1,Foxo3およびFoxo4遺伝子の発現低下が認められた。一方,PXR欠損マウスではそのような変化は認められなかった。さらにレポーターアッセイにおいてPXRの活性化はFOXO3依存的なRbl2の転写を抑制した。またゲルシフトアッセイにおいてPXRはRbl2プロモーター上のFOXO結合領域へのFOXO3の結合を抑制した。以上の結果から,PXRはマウス肝細胞において,FOXO3との相互作用によりRbl2の発現を抑制し,細胞周期をG0期からG1期に移行させることで様々な細胞増殖刺激に対する感受性を増加させる機能を有することが示唆された。
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