SD及びWistarラットにおける腎障害バイオマーカーとしての尿中L-FABPの評価
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概要
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【目的】尿中のL-type Fatty Acid Binding Protein(L-FABP)は,腎微小循環障害を反映する虚血・酸化ストレスマーカーであり,本邦ではすでに尿細管機能障害を伴う腎疾患の体外診断薬として保険収載されている.我々は昨年ラットCisplatin腎障害モデルにおいて,尿中L-FABPが腎障害バイオマーカー(BM)として有用であることを報告した.今回,ラットGentamicin腎障害(GM)モデル及び虚血再灌流(IR)モデルを用いて,尿中L-FABPの腎障害BMとしての有用性,ラット系統差などを検討した.【方法】SD及びWistar系雄ラットを用いて,GM及びIRモデルを作製した.GMモデルでは,GMを200mg/kg/日で4日間反復皮下投与した.IRモデルでは,イソフルラン吸入麻酔下,両側の腎動静脈を60分間完全閉塞後に開放した.モデル作製後,経時的に尿採取及び頚静脈より採血を行い,尿中L-FABP,BUN,血清クレアチニン(sCr),尿中酵素活性を測定し,病理組織学的検査を行った.尿中L-FABP測定は増感型ELISA法を用いた.【結果】GMモデルでは,4回反復投与後に腎臓近位尿細管に軽微な泡沫性の好酸性物が認められたが,BUN及びsCrは変動しなかった.尿中酵素活性では,LDHの変動はなかったが,g-GTP及びNAGは初回投与後48時間から上昇した.また,尿中L-FABPは初回投与の6時間後に最大値を示した.IRモデルでは,再灌流6時間後[as1] からBUN及びsCrは上昇し始め,尿中L-FABPは最大値を示した.GM及びIRモデルで,SD及びWistarラットの尿中L-FABPは同様に推移した. 以上の結果から,尿中L-FABPは病理組織学的に軽微な腎障害においても,[as2] 他のBMと比較して,より早期に反応する腎障害BMであることが示唆された.また,尿中L-FABPはSD及びWistarラットを用いた非臨床試験に応用できることが示唆された.既にヒト臨床BMとして利用されている尿中L-FABPが,ラット以外の実験動物種の腎障害モデルにおいてもBMとして有用かどうか,今後さらに検討する予定である.
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