血管内皮細胞においてNrf2およびメタロチオネインを誘導する有機-無機ハイブリッド分子
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概要
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【目的】有機−無機ハイブリッド分子は,有機化合物へ金属を導入した構造から分子構造と金属の相互の活性制御が可能である。そのため純粋な有機化合物がなし得ない新たな生物活性とそれに基づく創薬のシード/リード化合物,研究のツールとしての活用が期待されている。本研究では金属錯体ライブラリー(15化合物)から,細胞内防御機構を担うNrf2およびメタロチオネイン(MT)の発現を誘導する金属錯体を探索した。【方法】コンフルエントの培養ウシ大動脈内皮細胞を金属錯体で処理し,Nrf2の活性によりスクリーニングした。有望化合物について形態学的観察により細胞傷害性を評価し,Nrf2の下流防御因子(HO-1,NQO1およびγ-GCS)の発現ならびにMTの誘導について調べた。細胞内金属量をICP-MSで定量した。トランスフェクション法に基づきsiRNAを導入した。【結果・考察】スクリーニングの結果,Cu(Ⅱ)(Edtc)2錯体(Cu10)が細胞傷害性を示すことなくNrf2を活性化することが分かった。この活性化は濃度および時間依存的であり,下流防御因子の発現上昇を伴っていた。Cu10によるNrf2の発現上昇は,代表的なNrf2活性化物質であるスルフォラファンよりも強力であり,硫酸銅および配位子単独では起こらず,銅を亜鉛または鉄で置換すると消失した。これらの錯体分子で処理したとき,Cu10により細胞内の銅の蓄積は増加したが,亜鉛および鉄の蓄積に変化は認められなかった。一方,Cu10によりMTmRNAおよびタンパク質の発現が上昇した。このMTの誘導は,Nrf2をノックダウンしたとき有意に抑制された。以上よりCu10は,錯体分子の形成によって細胞内に高く蓄積し,Nrf2を活性化し,それによってMTを誘導するハイブリッド分子であることが示された。Cu10は,MTの誘導機構の解析ツールとして有用であると考えられる。
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