ナノ微粒子と抗原との相互作用は経皮曝露を介して未知のアレルギー反応を促進する
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概要
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黄砂や炭鉱粉塵など、環境中微粒子の免疫毒性により、塵肺やアレルギー疾患の悪化など、様々な健康被害が誘発されることは疫学的な事実である。一方でこれら健康被害は、微粒子の吸入曝露に起因するものと理解されており、もう一つの主要な曝露経路である皮膚を介した影響はほとんど注目されていない。事実、これまで数μm以上と考えられていた環境中微粒子が皮膚バリアを突破するとは考えにくいうえ、塵肺などの例からも吸入曝露による影響が大きいことは明白であった。このような中、我々は、ナノマテリアル(NM)の一つである非晶質ナノシリカ(nSP)が、①皮膚バリアを突破し、体内に侵入すること、②ダニ抗原とnSPの連続塗布によりIgGの産生阻害という新たな機序でのアレルギー促進作用を発揮することを見出した。従って、環境中微粒子、さらにはNMによる生体影響を精査するうえで、経皮曝露という視点からアレルギー疾患との連関を精査する重要性が提示された。そこで本検討では、nSPによるアレルギー促進機構のさらなる解明を目指し、nSPと抗原の相互作用に着目した検討を実施した。その結果、nSPと共に塗布される抗原の種類により、nSPによるIgG抑制効果が異なることを見出した。さらに、nSPの表面性状を制御し、抗原との相互作用を変化させた場合にも、IgG抑制効果が変動することが明らかとなった。従って、nSPの経皮曝露によるアレルギー促進作用が、抗原の相互作用によって制御されている可能性が示された。環境中微粒子によるアレルギー促進作用に関しては、古くから吸着する抗原の寄与が議論されていたこと、さらには、環境中微粒子中にもナノサイズの粒子が多数含まれる可能性が報告されている現状を鑑みても、今後、経皮曝露や抗原との相互作用に着目し、微粒子によるアレルギー促進作用を評価することが重要になるであろう。
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