銀ナノ粒子による紫外線誘導DNA損傷の増強
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概要
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銀ナノ粒子は高い殺菌作用を有しており,最近では多くの生活用品に使用されている。これまでに我々は,銀ナノ粒子に紫外線を照射すると銀イオン (Ag+)の放出が増大し,高い殺菌効果を示すことを見出した。しかし,この複合効果のヒトへの影響は不明である。本研究では,銀ナノ粒子より放出されるAg+と紫外線の複合作用後のヒト細胞への影響を,DNA損傷に焦点をあて検討した。培養皮膚角化細胞(HaCaT)にAgNO3を作用した後,UVB領域 (280-320 nm)の紫外線を照射した。AgNO3単独作用による生存率低下はほとんど観察されなかった。UVB単独照射では照射線量依存的に細胞生存率が低下した。一方,その両者を複合作用させると,それぞれ単独作用に比して,劇的な細胞毒性が観察された。この時,DNA損傷の高感度マーカーとされるヒストンH2AXのリン酸化(γ-H2AX)が,AgNO3とUVBの複合曝露により強く誘導された。更に,フローサイトメーターを用いてγ-H2AXと細胞周期の関与を解析した結果,AgNO3とUVBの複合作用は細胞周期非依存的にγ-H2AXを亢進させた。 γ-H2AXの誘導は最も重篤なDNA損傷であるDNA二本鎖切断 (DSBs) の形成が起因となり引き起こされる。最近では,DSBsだけでなく,紫外線照射により生成するピリミジン二量体を一次損傷とし,γ-H2AXが誘導されることも報告されている。そこで,ピリミジン二量体の生成量を検討した結果,AgNO3存在下でUVBを照射すると,ピリミジン二量体の初期生成量が有意に増加することが判明した。以上の結果より,Ag+の存在により,紫外線照射によって形成されるピリミジン二量体が増加し,DSBsの生成,生存率の低下をもたらすことが示唆された。このことより,銀ナノ粒子より放出されるAg+と紫外線の組み合わせは,遺伝毒性を上昇させる可能性が考えられた。
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