北海道日本海側におけるゴマフアザラシ ( Phoca largha) の 3次元的な利用範囲
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概要
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北海道日本海側に来遊するゴマフアザラシは,近年来遊域を南下・拡大させ,来遊個体数も急増している.本種は海氷地帯で繁殖を行うため,これまで海氷が来襲しない日本海側には亜成獣のみが来遊してくると考えられていたが,近年多くの成獣や陸上での出産も確認され,日本海側における本種の生態変化が確認されている.これまでの我々の研究から,北海道日本海側におけるゴマフアザラシの行動は 5つのパターンに分類された. ①抜海から約 25km圏内を移動, ②利尻・礼文島にも上陸し,抜海から約 80km圏内を移動, ③天売や焼尻にも上陸し,留萌周辺まで約 150km圏内を南下,.抜海以外上陸せず,石狩・積丹周辺まで約 250km圏内を南下,.沿海州や西サハリンに上陸し,抜海より約 500km圏内まで北上するパターンが確認されている.しかし,各行動パターンの利用水深や上陸場所からの移動距離などの 3次元の移動は明らかにされていない.そこで本研究では,行動パターンの異なるゴマフアザラシの 3次元の移動を把握し,北海道日本海側における本種の 3次元的な利用範囲を明らかにすることを目的とした. 2009~ 2013年に抜海で捕獲され,衛星発信器を装着した 25個体から位置情報等を得た.その情報から冬~春における各個体の行動圏を算出し,上陸場からの移動距離や利用水深,上陸頻度について分析し,各行動パターンの 3次元的な移動の特徴を把握した.その結果,大半の個体が抜海を主な上陸場としながら北海道日本海側を広範囲に渡って利用していた.また,水深約 100m以浅を利用している個体が多く,上陸場からの距離と利用水深には反比例の関係が見られ,上陸時間と上陸頻度には反比例の関係が見られた.これらの行動パターンに雌雄・年齢による違いは認められず,個体数増加による日本海側の過密化によって行動パターンも多様化してきた可能性が考えられた.
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