降水スケ-リグパターンの RCP s排出シナリオ依存性
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概要
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降水量は、温暖化の影響評価や適応策を考える上で最も重要な変数の一つである。この降水量の変化は、温暖化の影響に加えて、エアロゾルの排出量の違いによっても引き起こされる。一般に、温暖化の影響評価や適応策を考える際には幅広い範囲の排出シナリオの結果が必要となるが、大気大循環モデルを用いて様々な排出シナリオで予測を行うには膨大な計算機資源が必要となる。パターンスケーリングは、このような幅広い排出シナリオに基づいた将来予測を行うために非常に有益なツールである。パターンスケーリングにおける重要な仮定は、大気大循環モデルの結果から全球上昇気温で規格化された空間パターン(スケーリングパーン)がRCPs間のエアロゾルの排出量の違いが降水量スケーリングパターンに与える影響を調べた。全球平均気温1度あたりの硫酸塩エアロゾルと炭素性エアロゾルの排出量は、北米東部やヨーロッパ、東アジア、南米、アフリカの中央部で優位に異なっていた。一方、全球平均気温1度あたりの降水量の変化は北米東部、東アジア、ギニア湾周辺でRCPs間に優位な違いがみられるが、ヨーロッパや南米の中央部では見られなかった。エアロゾルに大きな変化があった地域では、ヨーロッパを除いて、基本的に全球平均気温1度あたりの降水量変化のRCPs間の違いと全球平均気温1度あたりの蒸発量変化のRCPs間の違いがつりあっている。また、いずれの地域においても、全球平均気温1度あたりのエアロゾルの排出量の減少率がRCP8.5のほうが小さいため、RCP8.5のほうがRCP2.6よりもエアロゾルの影響が大きい。このため、全球平均気温1度あたりの地表面の上向き短波放射の変化はRCP8.5のほうがRCP2.6と比べ大きく、全球平均気温1度あたりの潜熱、顕熱、長波放射の変化もRCP8.5ではRCP2.6と比べて小さい。海上では主に、全球平均気温1度あたりの地表に到達する日射量の変化のRCPs間の違いは、全球平均気温1度あたりの潜熱の変化のRCPs間の違いによって補償されている。一方、陸上では、潜熱だけでなく顕熱と長波放射の変化の違いも重要である。南米中央部で、エアロゾルの減少率にRCPs間で優位な違いがあるにもかかわらず、降水量の変化に違いが表れなかったのは、大部分が陸上であったためである。
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