荒廃山地に森林を再生した小流域における降雨量-直接流出量関係の長期変化
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概要
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本研究は東京大学演習林生態水文学研究所穴の宮試験流域を対象とし、単独流域法を適用して、荒廃山地に砂防植栽を施して森林再生を開始した期間(前期)と、それから80年が経過して森林に被覆され、土壌が回復途上にある期間(後期)で、森林の洪水緩和機能の指標の一つである降雨量と直接流出量との関係の違いを定量的に明らかにすることを目的とした。その結果、後期と比べて前期の方が、同じ降雨量に対して推定直接流出量が大きく、その差は、200、300、400mmの降雨量の降雨に対してそれぞれ16.0mm、25.8、33.5mmと推定された。前期と後期の差は、初期水分条件が乾燥の場合や、最大降雨強度が大きい場合により明瞭に現れた。例えば、先行水分条件が乾燥の場合、後期と比べて前期は、200、300、400mmの降雨に対して推定直接流出量がそれぞれ19.1、29.1、36.6mm大きく、最大降雨強度が大きい場合、後期と比べて前期は、200、300、400mmの降雨に対して推定直接流出量がそれぞれ36.3、56.7、71.3mm大きかった。一方、土壌が湿潤な場合および最大降雨強度が小さい場合は、両者の差は小さかった。
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