林床被覆が森林斜面における雨滴侵食量におよぼす影響
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概要
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林床植生や落葉層などの林床被覆の相違が、雨滴侵食量におよぼす影響を明らかにするため、群馬県に位置する林床環境が異なるヒノキ林とコナラ林を対象に、雨滴の運動エネルギー、雨滴による土壌剥離、林床被覆率を、9ヵ月間(2010年8月~2011年4月)にわたって調査した。デジタルカラー画像のピクセル判別により、林床植生と落葉層による林床被覆率の変化を調査した結果、ヒノキ林では73~87%と土壌の一部が年間を通じて露出していたのに対し、コナラ林では97~99%と林床はほぼ被覆されていた。土壌剥離量は、両地点ともに、雨滴の運動エネルギーEの総量との間には相関はみられなかったが、Eの時間最大値(E1h)との間には、正の相関関係が認められた。また,E1hと土壌剥離量の回帰直線の傾きは、ヒノキ林はコナラ林に比べて1桁以上大きく、雨滴によって土壌が剥離されやすい状態にあるといえる。以上の結果は、土壌剥離量に対する降雨運動エネルギーの影響を評価する際は、運動エネルギーの総量だけでなく、単位時間あたりの運動エネルギーを評価する必要があることを示唆している。また、林床被覆率が高いコナラ林では、ヒノキ林と比べて、林床被覆が雨滴のエネルギーをより大きく緩和することにより、土壌剥離が抑制されたと考えられる。
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