瀬戸川流域における長期流出解析及び旬流出量の季節変化と高知市と高松市の渇水発生
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概要
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高知県及び香川県にとって重要な水源である早明浦ダム流域内の瀬戸川流域(流域面積53.7 km2)を対象として、筆者らが山地河川流域に適用してきた水循環モデルにより、対象期間を1991年から2010年までの20年間として長期流出解析を行い、モデルの瀬戸川流域への適合性について検討した。さらに高知分水の導水量及び流域の降水量、流出量の季節変化を旬単位で表し、高知市と高松市の渇水発生との対応関係について考察した。流出量の実測値は瀬戸川取水堰から高知分水への導水量であるため、解析結果は10mm/day以下の低水時のハイドログラフで評価した。導水量の実測値は、排砂ゲートの操作時にはゼロ値となり実際の流域流出量ではないが、大よそ低水流出を表すものとした。その結果、早明浦ダム流域等に適用してきた水循環モデルによる解析値は実測値を概ね再現した。次に、高知分水導水量及び瀬戸川流域の降水量と流出量の季節変化を旬単位で表し、高知市と高松市における渇水発生との対応関係について考察した。両市における渇水事例は、平成23年度日本の水資源(水資源白書)に記載されている主な渇水から引用した。考察の結果、高知市の渇水は、瀬戸川取水堰から高知分水への旬導水量が12月から2月にかけて15mm/10days程度以下になる場合が多いと発生する傾向が見られた。一方、瀬戸川流域の旬降水量と旬流出量については、7月中旬から10月中旬にかけて平均値と中央値に格差が生じていた。そして高松市では夏期に渇水が頻繁に起きている。このことは夏期に極めて多量の降水量となる場合もあるが、通常は比較的少なく、春期の降水量よりも夏期の方が少ない傾向にある。このことが結果的に高松市の夏期の渇水発生に結びついていると言える。
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