潜在価格を考慮したウォーターフットプリント推計手法の開発
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概要
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【1.背景】水資源は有限であるにもかかわらず、人口増加やそれに伴う食糧需要の拡大、経済発展、バイオ燃料需要の拡大に伴い、淡水資源への需要が高まっている。 このような状況の下、水資源管理に適用できる概念として、ウォーターフットプリント(Water Footprint: WF)に注目が集まっている。 しかしながら、既存のWFの影響評価手法では、特性化係数として地域の水資源における希少性の指標を用いて、希少な水資源を使用すれば影響は大きいと述べるに留まっている。したがって、空間的・時間的遍在性が高く、循環資源である水資源の性質を踏まえた上で、人間活動による水使用によって、他の人間に与える影響量を考慮した評価手法が必要である。【2.目的】本研究では、利用可能な水資源変化がもたらす人間活動への影響を評価する手法を開発し、影響を金銭価値で示すことを目的とする。【3.手法】本研究では、日本における潜在価格を算出した福石(2010)の手法を基に、輸入の内生化を考慮した上で、潜在価格による影響評価を行う。ここでは、水資源に対してこれ以上開発する余地がない、すなわち追加的な取水を行うには、他者の便益を自己の利益とするという仮定の下、利用可能な水資源量の増減によって、どれだけ利益が増減するのかを求める。今回はOECD産業連関表データに加えて、産業部門ごとの取水量がわかるFAOのAqua stat取水量データを用いて、線形計画法により、GDPを最大化することを目的関数とする。これにより、データの存在する41か国における水資源の潜在価格を明らかにする。【4.結果】水一単位あたりの生産性が低いほど他者との競争に負け、経済財である水資源が獲得できないとした上で、1㎥の水を取水することができなくなった際に減少する付加価値額を、各国別、一次産業、二次産業、三次産業別に計算した。 今回の算出の結果、ヨーロッパの潜在価格が高く評価されることとなった。つまり、ヨーロッパでは水一単位あたりの生産額が大きいとわかる。これは裏を返せば、水資源の変動に対する脆弱性が高い可能性があるということでもある。 また、二次産業や三次産業での取水を1㎥減らして、一次産業に割り当てた場合を計算すると、日本や韓国における経済的悪影響が大きくなった。
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