流出研究における森林表現方法の最近20年間(1988~2007)の変遷
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概要
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20年前にいくつかの学問分野の横断的な研究組織として水文・水資源学会が設立されたが,その構成分野の一つが森林水文学分野であった。「森林水文学」の明確な定義は教科書にはなく、「森林の立場を明らかにする」(中野1976),「森林分野における水文学」(塚本ら1992),「森林という場を対象とした水文学」(久米ら2007)などと使用されている。しかし様々な森林の機能・関与・存在についての研究において当該の森林がどのような森林なのかを適切に表現することが伴わなければ,その研究成果が広く水文学に貢献していくことにはならないであろう。それは単に様々なインデックスや物理量などのどれを選択するかという問題ではなく、調査の方法・規模、モデルの構造・運用など研究の本質に関わった問題である。 田中・鈴木(2007)は,森林を表現する際の問題点として,以下の6点を指摘した。1)対象とする大きさ(プロットか斜面か広域か),2)構成物(個葉,幹,鉛直構造,水平構造)の簡略化の程度,3)視点位置(林冠上,林内,林床,林縁),4)外的要素の存在(地形,天候),5)(天然林vs人工林,針葉樹林vs広葉樹林というような)単純パターン化,6)森林表現の情報発信側・受信側の乖離した心象形成,である。他分野の生態学・森林経営学・景観学・砂防学という分野ではそれぞれ上記1)2)3)について明確な方向性があり4)5)6)による問題を抑制しているように見受けられる。しかし水文学においては様々な時空間スケール,簡略化,扱いの森林表現が混在しており、どのような方向性で個々の水文観測・測定が性格づけられるのか,それらの成果を蓄積していく際にはどんな森林表現が必要とされるのかについて,従来あまり議論されていなかった。 そこで著者らは,横断的学会である水文・水資源学会の設立後20年間の同学会誌掲載論文において森林がどのように表現されてきたかを、特に流出との関わりついて調査した。その結果を報告する。
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