3次元画像を利用した排尿障害の解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【背景】3次元画像を用いた下部尿路の形態,動態変化から,排尿機能を解析する試みを行い,排尿障害の病態を画像解析結果から考察した. 【対象と方法】対象は,夜尿または昼間尿失禁を主訴に受診し,尿流検査での閉塞性パターンと排尿時膀胱尿道造影で狭窄が疑われた男児20症例のうち,排尿時多列CT撮影(voiding-CT)を行い,3次元モデルとバーチャル内視鏡(VES)動画が得られた18症例.さらに,その他の疾患の診断で行われたCT,MRI検査の画像ファイルを用いた.方法はDICOMビューワと医療用CADアプリケーションを使用して,下部尿路3次元モデルの作成とVES動画を構築した.排尿時の膀胱尿道3次元モデルと骨盤腔の位置関係と排尿症状について検討した.CADで測定した尿道内腔の壁面の曲率と,内腔径をVES画像に同期し,定量性をもたらした.3次元モデルを利用して尿流の水力学シミュレーションを行った. 【結果】排尿異常患者群の3次元モデルによる膀胱と尿道形態は,3つのタイプに分類された.それぞれのタイプ別に定量データを比較すると明らかに違いを認めた.最も多いのは膀胱が前屈した形態で,膀胱底の下垂と尿道の屈曲が,膀胱内圧を上昇させ膀胱壁肥厚の原因となっていることが3次元モデルから確認された.VES画像とCADデータの同期画像は,排尿時の膀胱頸部から尿道にかけての内腔の平滑性と曲率を理解するのに役立った.3次元モデルを利用した尿流の水力学シミュレーションを作成することが可能で,形態の変化による尿流の変化を検討した. 【結語】3次元バーチャル技術を利用した膀胱尿道排尿モデルの作成は,従来の検査法では観察不可能な情報を提供し,排尿異常の病態を理解するのに有効である.今後,神経的な事象から,筋組織の動き,そして膀胱尿道全体の連続的な構造の変化をシミュレーションするマルチフィジックスなモデルの作成により,病態の理解と適切な治療方針の決定に役立つものと進化するだろう.
- 日本泌尿器内視鏡学会の論文
日本泌尿器内視鏡学会 | 論文
- CT画像における脂肪面積解析による肥満と鏡視下ドナー腎摘出術の手術因子との関連性の検討
- 褐色細胞腫に対する副腎摘除術の術式の選択に関する検討 : 腹腔鏡下手術と開放手術との比較から
- 膀胱癌の光力学的診断 : 蛍光尿細胞診の有用性 (特集 光力学診断の新展開 : 光の先に何が見えるのか)
- HoLEP(Holmium Laser Enucleation of the Prostate)による「前立腺側葉12時の剥離」を標準化するための一考察
- 患者特異的腹腔鏡手術シミュレータ (特集 腹腔鏡手術におけるシミュレーションとナビゲーション)