腎腫瘍に対する経腹膜的単孔式腹腔鏡手術
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概要
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低侵襲で優れた整容性が期待される術式として,2007年から単孔式腹腔鏡手術(laparoscopic single-site surgery; LESS surgery)が腎腫瘍において施行され,広島大学病院では2011年1月より腎細胞癌に対してLESSによる経腹膜的根治的腎摘除術(LESS腎摘除術)を開始した.11例の腎細胞癌に対してLESS腎摘除術を施行し,対象は男性6例,女性5例で平均年齢は54.9歳であった.患側は右4例,左7例で,最大腫瘍径の平均値は53.3mmであった.平均手術時間,出血量は175.5分,52.3mlで術中合併症を認めず,また従来法や開腹手術への移行なく手術を完遂した.同時期に当科で施行した20例の従来法との比較では,有意差は認めないがLESS腎摘除術の方が手術時間は短く出血量は少なかった.LESS腎摘除術では腎を取り出す際に5cm程度の皮膚切開が必要であるため,Parallel法を用いた従来法と同様の鉗子操作が可能になる.さらに経腹膜アプローチは後腹膜アプローチよりも操作腔が広く,従来法とほぼ同等の操作が可能となる.根治的腎摘除術は悪性腫瘍が対象のため根治性が最も重要であり,LESSの継続にこだわることで根治性や安全性を損なわないために,補助ポートの追加を躊躇しないことも重要になる.LESS腎摘除術は新しい術式であるため長期的観察ができておらず,低侵襲性や最も重要とされる悪性腫瘍に対する制癌性についても不明である.腹腔鏡手術が登場した際に行われたように,長期的かつ大規模な臨床研究が待たれる.
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日本泌尿器内視鏡学会 | 論文
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