序文
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概要
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腹腔鏡下副腎摘除術は1993年に本邦から最初に報告された.その後,本学会の精力的な活動によって術式の標準化が達成され,いまや副腎手術のスタンダードになっている.最初の報告から20年が経過し,長期成績をテーマに特集が企画されたことは誠に時宜を得たものと思われる. 石戸谷滋人先生(東北大)には,原発性アルドステロン症の診断治療についてガイドラインを中心に解説いただいた.なかでも最近注目される微少腺腫の概念とその扱いがわかりやすく述べられている.内海孝信先生(千葉大学)は,原発性アルドステロン症の予後について,降圧剤内服中止を予測する因子を中心に詳細な検討結果を報告した.また術後降圧薬内服の中止を予測するモデルであるAldosteronoma Resolution Scoreの妥当性についての検証結果も興味深い.笠原 隆先生(新潟大)は,褐色細胞腫に対する腹腔鏡下副腎摘除術の治療成績を報告された.経験豊富な術者のもとで行われれば,腹腔鏡下手術は褐色細胞腫に対しても良好な成績が得られることを示している.宮里 実先生(琉球大)には,クッシング・サブクリニカルクッシング症候群を取り上げていただいた.サブクリニカルクッシング症候群は,クッシング症候群特有の身体徴候はないものの,コルチゾール自律分泌能があり,高血圧・耐糖能異常・高脂血症の合併頻度は高い.クッシング症候群同様に症状改善が期待できるため,積極的に治療介入の必要性が示されている.最後に高橋 渡先生(熊本大)に,転移性副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除術の意義を考察いただいた.転移性副腎腫瘍に対する外科的摘除術は未だ論議が多い.症例ごとに画像診断や原疾患である生物学的悪性度や全身状態を慎重に評価することで,転移性副腎腫瘍に対する有用な治療戦略となることが示されている. 以上,どの論文も大変読み応えのある内容で,腹腔鏡下副腎摘除の歴史20年の節目に相応しい特集になったものと信ずる.日常臨床で少しでも役立てていただければ幸いである.
- 日本泌尿器内視鏡学会の論文
日本泌尿器内視鏡学会 | 論文
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