泌尿器腹腔鏡技術認定取得医の手術成績:初回技術認定医のアンケート調査の解析報告
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概要
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2004年に発足した泌尿器腹腔鏡技術認定制度も5年を超えた.今回,泌尿器腹腔鏡技術認定制度によって技術認定を受けた術者による泌尿器腹腔鏡手術の安全性,妥当性や質(integrity)を検証するために,初回の技術認定を受けた136名を対象としてアンケート調査を行った.結果として130名より2590件の泌尿器腹腔鏡手術の術中術後データが得られた.更新申請者130名の5年間の泌尿器腹腔鏡手術経験件数と合わせてこれらを解析した.130名の技術認定医が経験した泌尿器腹腔鏡件数は2004年から2009年まで年々増加し,2009年には4599件に及んだ.腹腔鏡下腎部分切除術や腹腔鏡下前立腺全摘除術の件数は年々増加していたが,これらの手術を5年間,経験していない認定医はそれぞれ19.2%,54.6%であった.2590例の調査の結果,開放手術の移行率は2.5%,同種血輸血率は1.6%,重大な術中合併症(Satava分類のⅡ以上)の頻度は1.2%,重大な術後合併症(修正版Clavien分類のⅢ以上)の頻度は0.9%,全ての合併症の頻度は3.7%であった.これらのadverse eventの頻度は欧米やアジアの泌尿器腹腔鏡の経験豊富な施設からの報告と遜色無いか低い数字であった.周術期の死亡例は無かった.技術認定医が手術に参加する場合に,術者か指導者かの役割の違いでこれらのadverse eventの発生頻度に有意な違いは無かったが,副腎摘除術,腎腫瘍に対する腎摘除術,前立腺全摘除術においては経験数が多い認定医は指導医的立場で参加する頻度が有意に高かった.認定医の5年間の経験件数とこれらのadverse eventとの関係を検討すると,全ての泌尿器腹腔手術の解析では開放手術の移行頻度は経験数が少ないと有意に高い結果であったが,その他の合併症や同種血輸血率などでは経験数との関係は明らかでなかった.しかしながら腎部分切除術における開放手術への移行率,前立腺全摘除術における同種血輸血率などでは経験数が少ないと有意に高かった.手術時間では腎尿管全摘除術,前立腺全摘除術,腎盂形成術などで経験数が豊富であると有意に短い結果であった. 初回の泌尿器腹腔鏡技術認定医は認定後の5年間,術者,指導者としての経験数は術者間に大きな違いがあったが,おおむね経験数に関係なく,低い術中,術後合併症頻度で様々な泌尿器腹腔鏡手術を術者あるいは指導者として施行していることがうかがわれた.
- 日本泌尿器内視鏡学会の論文
日本泌尿器内視鏡学会 | 論文
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