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概要
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光力学診断(photodynamic diagnosis(PDD))は,1980年代に現在の原型システムおよび光感受性物質であるPhotofrin II(HpD)が開発されたことにより臨床応用が試みられたが,光感受性物質の全身投与による光線過敏症を主とする光毒性反応などの副作用から,その後の臨床応用は停滞した.近年,protoporphyrinIX前駆体で生体内に存在する天然アミノ酸である5-aminolevulinic acid hydrochloride(5-ALA)をはじめとする副作用発現の少ない光感受性物質の開発や,青色励起光で赤色蛍光を描出するPDD画像システムの改良・開発により,臨床応用への活路が開けられた.脳神経外科領域ではPDDの併用によるglioblastomaの手術成績の向上が既に報告されており,本邦でも既に多くの施設で実施されている.泌尿器科領域では5-ALAの局所投与が可能な膀胱の筋層非浸潤癌の微小病変や上皮内癌の診断精度が大幅に向上することがドイツを中心に数多く報告されてきた.さらに無作為臨床試験において,PDDを併用することでTURBT術後の腫瘍残存率や膀胱内再発率を減少したとの報告があり,ヨーロッパでは膀胱癌に対するPDDが保険医療の承認をうけ,筋層非浸潤膀胱癌の診断の第一選択になりつつある. 安全性と診断精度が大きく向上したPDDによる膀胱癌の診断は,疑陽性率の高さが国内外のこれまでの報告でも課題になっている.これには接線効果などの光学的要因や内在性の光感受性物質などの生物学的要因が考えられているが,未だ結論は出ていない.また,青色光の連続照射に伴う蛍光の退色(Photobleaching現象)も診断を困難にする要因となり,診断精度の向上には手際よい診断操作手順の確立が必要である.さらに,本邦においては,PDDシステムの蛍光フィルターが装着された光学視管は薬事の承認を得ているが,PDDにおける主な光感受性物質である5-ALAおよびその類縁物質は未承認で高度医療として医師主導による臨床研究の域を出ないのが現状である. 本邦におけるPDDの現状については,松山豪泰教授(山口大学)が偽陽性の分子生物学的検討を,井上啓史准教授(高知大学)が膀胱癌を中心とした臨床研究の展開を,また,PDDの応用展開として藤本清秀准教授(奈良県立医科大学)が蛍光尿細胞診を,腎細胞癌に対する応用は上野宗久教授(埼玉医科大学国際医療センター)が,さらに田中 徹部長(SBIアラプロモ㈱)がPDDと光力学治療(PDT)を含めた現状と将来展望について詳細を記述する.現時点では泌尿器科領域におけるPDDは白色光では診断が困難な筋層非浸潤膀胱癌の診断が中心になるが,5-ALAは経口投与が可能であることから腎細胞癌に対する腎部分切除術や前立腺全摘除術の断端の診断をはじめ多くの泌尿器癌の臨床に有意義な展開が期待される.
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