高等学校家庭科における被服行動に関する教材開発及び授業実践
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概要
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<BR>1.研究目的<BR>現代の生活においては、ファッションが楽しみのひとつとして受け入れられ、衣服が自己表現の手段としても発展してきた。一方で、生活環境は個人の衣服に対する意識や行動に、大きく影響を与えている。特に都市部と周辺部の子どもの間では衣服についての意識や行動に差が生じているのではないかと仮定し、都市部と周辺部の生徒を対象に、「被服行動」に関するアンケート調査を行った。本研究の目的は、①先の調査で意識の低さが明らかになった、「機能性」を踏まえた被服購入時における視点を整理する教材を提案し、②授業実践を通して実態に応じた指導を行うための題材や指導方法を具体的に検討する。<BR>2.研究方法<BR> 授業実践の対象は大分市内の私立高等学校(2クラス・合計73名)である。授業は全2時間、具体的な内容は、1時間目は教師の勤務日と休日の2種類の服装を提示した各4パターンから1つずつ選び、2時間目は何を重視して選んだか発表し、全体で整理させた。男女別の1班5~6名のグループ活動とした。<BR>事前及び事後アンケートの内容は、被服購入時の様子に関する項目が9項目、被服行動に関する項目が19項目とした。「被服行動に関する項目」は、先行研究を参考に、次のように設定した。①最近のファッションへの興味や流行をとりいれるなどの「流行性」、②店ごとの価格比較やバーゲンセールの利用などの「経済性」、③学校の制服や雰囲気に応じるなどの「社会規範」、④品質や取り扱い表示の確認などの「機能性」、⑤友人の着ている服が気になるなどの「他者承認期待」、⑥おしゃれをすることへの興味や魅力を引き出すなどの「自己顕示・表現性」という6尺度について3~4項目の質問を設定した。<BR>3.結果及び考察<BR>「被服行動」に関する質問項目をカイ二乗検定によって分析した結果、授業前後において10%水準で有意差が見られなかった。<BR>これはアンケートの全体数が少なかったことも考えられるため、割合の変化を分析した結果、19項目中、7項目において数値が上昇し、3項目において低下していた。<BR>また、「あてはまる」を5点、「あてはまらない」を1点として、t検定によって分析した結果、5%水準で全体では3項目、さらに、自由記述における視点の個数を点数化した結果においても有意差が見られ、事後では増加していた。<BR> t検定において有意差の見られた項目は「流行性」2項目、「経済性」1項目であった。視点の個数に関しては、全体では159個から282個に増加し、平均では2.86個から3.84個となり、有意差が見られた。<BR>また、視点の内容を見てみると、24種類から37種類となり、事前では見られなかった視点にも目を向けられるようになっていたことがわかった。視点個数において、6尺度いずれも増加しているが、特に「流行性」「社会規範」に関する項目は事前ではほぼ記述が見られなかったことに対し、事後ではそれらに関する記述が見られたため、視点の広まりが見られた。<BR>この結果から、授業の前後では、「被服行動」全体に関する意識の変化を有意差からとらえることはできなかったが、割合から意識の高まる傾向がみとめられた。また、視点に関しても、個数が上昇し、記述された内容にも深まりが見られた。以上より、この授業を通して、「被服行動」に関する意識の高まりに加え、被服選択を行う上で条件整理の際に重要な、視点を増やすことができたと考えられる。<BR>
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