製薬企業の利益率:評価方法の理論的背景
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概要
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製薬企業を高利益率として特徴づける見解を批判して,その利益率は会計的利益率でなく, 経済的利益率で計測すべきであり, またR&D投資支出を反映すべきであることが主張されている。しかし, このような主張に関連して, 会計的利益率と経済的利益率の相違の理論的背景, 学説史的背景が明確に述べられていないために有効な議論が行われていない。そこで, この論文では, 第一に, 経済的利益率の概念を簡単な理論で提示し, さらに, それが近年になって産業組織論, 財務理論, 会計理論において重視されるに至った経緯を解説する。第二に, 経済的利益率の計測は事実上困難であり, これに代わる代替的指標が必要となることを示し, 個々の指標の検討を行う。 このとき企業価値に基づく"q比率"が, 会計的利益率に並んで代替的指標となることを示す。第三に, 実際に製薬企業を対象にして会計的利益率とq比率の比較を行う。以上の結果, 製薬企業の経済的利益率の複数の代替的指標は異なる水準を表示し, どの指標を使用すべきかは決められないことを示す。したがって製薬企業の利益率の高低自体を問題とするのは困難であり, むしろ表示される利益率の高低の原因そのものの解明が必要である。すなわち会計的利益率, q比率等の各種の代替的指標をそれぞれの特性に応じて使用し, 表示された利益率の高低の決定要因について検討すべきである。
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The Health Care Science Institute | 論文
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