痴呆性老人に対する在宅ケアの在り方:デンマーク,英国の現状から
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概要
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デンマークおよび英国における痴呆性老人に対する在宅ケアの在り方について現状分析し,それぞれの問題点について検討した。<BR>両国において痴呆性老人に対する在宅ケア供給体制は基本的には共通しており,痴呆が軽度で問題行動がない場合は自宅に居住し,一般的在宅ケアを受け,重症化あるいは不安,幻覚,譫妄,興奮等の問題行動が生じた場合,老年精神科的介入を行い,特別養護老人ホームへの入居,病院への長期入院,老年精神科地域ケアによる在宅管理を受ける,というものである。デンマークでも英国でも老年科の積極的介入は認められなかった。<BR>このような両国における痴呆性老人在宅ケア供給体制にいくつかの問題点が認められた。<BR>1)痴呆ケアと一般在宅ケアの基本的相違:一般在宅ケアは日常生活動作の介護に重点を置いており基本的には患者によってそれまで遂行されていた機能を在宅ケアが代行するものである。しかし,痴呆ケアに対する近代的アプローチは患者の自立を最大限引き出すことであり,基本姿勢に根本的相違がある。<BR>2)痴呆の診断,予後評価の重要性:痴呆の中に治療により改善するものがあることを考えると,専門家による対応を整備し,早期発見に適した立場にいる一般在宅ケア従事者を教育することが重要である。<BR>3)医療-福祉連携としての在宅痴呆ケア:デンマークにおいても英国においても,在宅ケアを担当している社会的サービス部門と老年精神科が属する保健部門には隔たりがあり,その背景に行政的,文化的,歴史的相違の存在が示唆され,今後わが国における連携の実態や問題点の検討が必要となるであろう。<BR>4)家族に対する支援:初期の痴呆性老人に対する在宅ケアにおいて家族の果たす役割は大きく,公的な在宅ケアと家族による介護の協調が重要である。また,家族にとっての痴呆老人の介護負担は大きく,その軽減をはかる必要がある。
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The Health Care Science Institute | 論文
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