市民が望む医療のあり方
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概要
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この論文の目的は,わが国の医療システム,すなわち消費者である患者と供給者である医師と,その背景にある制度がかかえているいくつかの問題について,患者あるいは消費者の立場から経済学的に分析し,問題を提起することにある。一般の財やサービスの市場と同様に,医療サービス市場も需要者である患者と供給者である医師・医療機関が存在する。しかし,一般の財・サービスの市場とは異なり,医療サービスには情報の非対称性があるたあに,かならずしも効率的に医療サービスは供給されていない。また,制度もこのような問題を是正するような十分な働きをしていない。この論文を通じてわれわれは次の3点を強調する。まず第1は患者の利益の尊重である。患者と医師の間での診断や治療に関して情報の非対称性があるために,患者は弱い立場にある。そのために,医師によって患者の利益が侵害される可能性もある。残念ながらわが国ではこのような侵害を抑制するようなメカニズムは十分ではない。第2は情報の公開と共有である。医療サービスには情報の非対称性がっきまとう。患者は診断や治療に関する知識を持っていないから,医療サービスの選択にあたっては医師が提供する情報に頼らざるをえない。情報が十分に公開されないのであれば,患者は最適な選択をすることができない。したがって,医師は情報を開示し,患者は情報を共有した上で選択しなければならない。第3は医療資源の効率的活用である。情報の非対称性とさまざまな規制はインセンティブを歪めている。したがって,医療資源の効率的な配分が実現されるような制度を設計しなければならない。たとえば,情報の非対称性を是正するための仕組み,第三者による質の評価などがそれにあたる。
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The Health Care Science Institute | 論文
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