在宅介護の経済分析:国際的視角から
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概要
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高齢者をはじめとする介護を必要とする人々を,施設介護ではなく国内では在宅介護,海外ではコミュニティケアを,推進させようとする機運が急速に高まっている。それはとくに介護を受ける人々の在宅で介護されたいという希望を受け入れようとする,一般的なノーマライゼーションの一環でもあろう。高齢者介護を主とする在宅介護は,経済学的に考えるとき,いくつかの興味ある問題を含んでいる。一般に医療サービスが病院のような医療機関によって提供されるのに対して,介護サービスは施設でなされるformalな場合と, 在宅でなされるinformalな場合に大きく分類される。そこで介護を必要とする高齢者をもつ家計では,在宅で介護するかあるいは施設で介護するかという選択に直面することになる。小論では,家計のこの選択自体とそれに国や自治体のさまざまな施策が,どのように影響するかを第一の問題とする。理論的には,informal carerの介護時間についての限界便益と限界費用の一致するところで選択がなされるとする。このときこの選択に決定的に影響するのは,限界費用では在宅介護を実質的に担うinformal carerの介護の機会費用であり,限界便益では介護をすることにまつわる利他的な要素である、第二の問題は,在宅介護の進展にも関わらず,施設介護の守備範囲は依然として存在するのであるが,在宅,施設,さらに病院という3つの場での介護や治療の関係は,どのように説明できるだろうか,である。小論ではこれを最適配置の問題として, それぞれの介護を必要とする人の介護の依存度についての, 社会的便益と社会的費用の乖離を基準として考察する。第三の問題は,実際に海外や国内でのこのようなコミュニティケアや在宅介護の進展と現状の問題点を考察することである。とくに先行した英国での状況と日本について検討している。日本では,informal carerの機会費用をどのように評価して給付していくかが,日本的在宅介護を成功させるために必要であると主張する。
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The Health Care Science Institute | 論文
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