医療機関における患者との関係性構築 リレーションシップ・マーケティング概念を用いて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年,マーケティング概念は医療機関においても注目されており,実際にマーケティングを実行する組織は増えている。1960年代後半にソーシャル・マーケティングの概念が出現して以降,それまで営利企業のものと考えられていたマーケティング諸概念・諸技法を病院などの非営利組織にも適用していこうという動きが起こった。<BR>マーケティング分野においては,時代や環境の変化とともに取引パラダイムのシフトが認識されており,その流れは刺激-反応から交換,近年では関係性パラダイムへと向かっている。関係性パラダイムでは企業と顧客との間に信頼を基軸とした長期継続的な関係性を構築することで,互恵的な価値の創造をあざす。<BR>本稿では関係性パラダイムをベースとするリレーションシップ・マーケティングのフレームワークを用いて,医療機関が患者と良好な関係性を構築する要件について考察した。今日,医療機関を取り巻く環境は供給過剰の状態にあり,熾烈な競争を強いられている。この激しい競争時代に生き残れるのは確実に患者から選ばれる医療機関だけである。<BR>事例として練馬総合病院を取り上げ,リレーションシップ・マーケティングの観点から考察した結果,5つの特徴が浮かび上がった。同病院では院長によるビジョンの明確化,病院理念の確立,職員の意識改革,コミュニケーション・インフラとしての情報化の推進,医療機関と患者との信頼の創造が実践されている。<BR>医療機関には最終目的である患者満足をめざして, 患者との良好かつ継続的な関係性を構築することが求められる。そのために患者との信頼を形成すること,その前提として組織内部の職員との間に強い信頼を形成することが重要となる。
- 医療科学研究所の論文
医療科学研究所 | 論文
- 開発環境:医薬品開発の現状と課題 (特集:日本の医薬品産業発展のために何をなすべきか--「日本の医薬品産業発展のために何をなすべきか」特集にあたって)
- 有害事象把握のための遡及的診療録レビュー手法に関する検討
- 医療安全管理を巡る諸問題について:インシデント・アクシデントレポートを中心に (特集:医療安全管理の現状と展望)
- 労働生産性と労働量・労働形態
- DPCデータを用いた診療プロセス分析 (特集 DPCデータによる医療サービスの実証分析)