医薬品企業のM&Aの費用と効果:日本における企業買収の可能性
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概要
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1990年代の欧米の医薬品企業では大規模なM&Aが行われた。これに対して日本の医薬品企業ではM&Aがほとんど行われなかった。この論文では次の問題を検討する。第1は, 1990年代の日本の医薬品企業においてM&Aが果たして必要であったかという点である。第2は,日本の医薬品企業のM&Aの阻害要因としてのM&A費用がどの程度であったかという点である。第3は,2000年代において日本の医薬品企業のM&Aの可能性があるかという点である。この論文ではM&Aの費用と効果を評価する枠組みを提示し,日本の代表的な製薬企業20数社の財務データを使用して企業の市場価値と本源的価値を計測し,分析を行った。この結果,次の点が判明した。第1に1990年代半ばの日本の医薬品企業のM&A費用は小さく,M&Aが容易であったが,大規模企業の効率性は必ずしも高くなく,M&Aにより企業規模を拡大する動機がなかった。第2に1990年代末になって,大規模企業の効率性が高くなり,M&Aによる企業規模の拡大が望ましくなったが,このとき買収対象企業の株価上昇によりM&A費用が増加し,M&Aが事実上困難になった。第3に2000年代初頭においてはM&A費用が上昇したたあ,極めて少数の企業の組み合わせについてしかM&Aの利益が生じなくなった。この結果,日本の医薬品企業の大規模で効率性の高い企業,外国の大規模企業,日本の小規模で効率性の高い企業が参加するM&Aは,組み合わせに限定される。このように日本の医薬品企業の1990年代のM&Aの数は「少なく」規模も「小さかった」。また,1990年代半ば可能であったM&Aの多くは,現在行うには既に「遅すぎる」。また,2000年初頭で可能なM&Aの組み合わせは極めて「少ない」という結論が導かれた。
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The Health Care Science Institute | 論文
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