東南極,明るい岬に分布する花崗岩質岩の岩石学
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概要
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東南極リュッツォホルム岩体(吉田・神沼,1986;以下,LHCと略)には,変成作用ピーク時以前もしくは同時に活動したpre/syn-metamorphic granites (以下,Pre/SynMGsと略)と変成作用ピーク後に活動したpost-metamorphic granites(以下,PostMGsと略)が広範囲にわたって分布している(Nishi et al.,2002 ; Ajishi et al.,2004).本発表では,明るい岬に産出するPostMGsについて,野外・鏡下観察結果,主成分・微量成分化学組成,Sr,Nd同位体比組成を報告する.さらに,同じ LHCの漸移相帯に分布する奥岩 PostMGsと比較検討を行い,その成因について考察する. 明るい岬は昭和基地の北東約95kmのプリンスオラフ海岸に位置し,LHCの漸移相帯(Hiroi et al.,1983)に属する.東西4km,南北3.7kmの露出域を有するこの明るい岬には片麻岩類,塩基性変成岩類,花崗岩類が露出している(Yanai et al.,1977).このうち,ザクロ石黒雲母片麻岩,黒雲母角閃石片麻岩および角閃石黒雲母片麻岩が構成岩の大部分を占めている.なお,ザクロ石黒雲母片麻岩から532±6 MaのジルコンSHRIMP年代が報告されている(Shiraishi et al., 1994). 明るい岬に分布するPostMGsは,周囲の片麻岩の片理を明瞭に切って岩脈状に産する.岩脈は北東-南東方向に高角で貫入する場合が多い.岩石は黒雲母花崗岩,含黒雲母石英アルカリ閃長岩で,肉眼では中粒~粗粒を呈する.主要構成鉱物は石英,カリ長石,斜長石,黒雲母で,副成分鉱物として白雲母,ジルコン,アパタイト,不透明鉱物を含んでいる.全岩化学分析の結果を見ると,明るい岬PostMGsはパーアルミナスな性質を有し,磁鉄鉱系列の花崗岩類と同様の高いFe3+/Fe2+比を示す. 明るい岬 PostMGs5試料を用いてRb-Sr全岩アイソクロン年代を求めた.得られた年代は536±34 Maを示し,Sr同位体比初生値は0.70670±0.00080であった.この年代はザクロ石黒雲母片麻岩から得られたジルコンSHRIMP年代と誤差の範囲で重複し,野外で観察される貫入関係と矛盾するものではない.すなわち, 本地域のPostMGsはLHCの変成作用ピークの直後に活動したものと考えられる.一方,LHC漸移帯に分布する奥岩 PostMGsのSr同位体比初生値は0.70607(Nishi et al.,2002)であり,明るい岬 PostMGsの初生値と誤差の範囲で重複する.さらに,εダイアグラムでは明るい岬 PostMGsはεSr値が+35~+45,εNd値が-6~-9の範囲の範囲にプロットされ,奥岩 PostMGsもその近傍にプロットされる.これら同位体組成は明るい岬と奥岩の PostMGsが類似した同位体的特徴を有する起源物質からもたらされたことを示唆する.
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