錯視経験が意見の対立によって生じる偏見的認知を緩和する効果:自らの社会的判断を過信するのは、物理的知覚の客観性を過信することによるものなのか
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概要
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本研究は、錯視が意見の対立によって生じる偏見的認知を緩和することを示した。意見の対立が争いを生む理由の一つとして、人は対立する他者を、個人の動機や立場によって歪んだ見方をしていると(以下、バイアス)認知する傾向が報告されている。この傾向は、人が自己の見方を客観的なもの(状況の正しい反映の結果)と捉えるばかり(Naïve realism)、相反する見方を状況などに帰属することができず、その見方を行う人の内的属性に帰属する結果であると説明されている。本研究は、自己判断の客観性の過信は日々の物理的対象の知覚において、自分の見方が正しいという想定が不都合をきたさないことによって強化されたものであると仮定した。そこで、錯視によって知覚に対する疑念を生起することがバイアス認知に与える影響を検討した。その結果、錯視経験は対立する他者へのバイアス認知を低減することが示された。社会的判断の客観性の過信は、知覚の過信に起因している可能性が示唆された。
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