脳卒中ケアユニットのリハ実施量増加による、運動機能、ADL、合併症予防に対する効果検証
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】 平成24年度の診療報酬改定により、初期加算が新設され、本邦における急性期リハはより早期からの介入が求められている。当院では、平成15年にSCUを開設し、平成18年よりSCU加算算定要件を満たす施設として12床のSCUを運営している。平成23年より専任の理学療法士3名、作業療法士1名、言語聴覚士3名を配置している。 本研究の目的は、当院に入院した急性期脳卒中患者を対象に、SCU在室期間内でのリハ実施量増加による、急性期病院退院時の運動機能と日常生活活動や合併症の発生、転帰に与える影響について検証することである。【方法】 専従理学療法士1名体制の期間である平成18年4月から平成19年3月の当院に入院した急性期脳卒中患者(以下A群)180名、専任理学療法士3名、作業療法士1名、言語聴覚士3名を配置した期間である平成23年4月から平成24年3月の急性期脳卒中患者(以下B群)570名とした。そのうち、くも膜下出血、再発例、入院時NIH Stroke Scale(以下NIHSS)で軽症例(1点~4点)重症例(25点以上)、発症前mRS3以上、死亡終了(SCU在室期間内)の症例は除外した。対象者の内訳は、A群63名/B群102名(以下A群/B群)、平均年齢74.0±15.2歳/74.0±14.3歳、性別は男性33名女性29名/男性51名女性50名、入院時NIHSSの中央値は8点/11点、発症前mRSは0/0、入院時上田式12段階片麻痺機能検査は上肢4手指4下肢6/上肢3手指2下肢5、入院時FIMは35点/28点で、ベースラインとして2群間に有意な差は認めなかった。 調査項目は、退院時mRS、退院時NIHSS、退院時FIM、退院時上田式12段階片麻痺機能検査、SCU在室日数、在院日数、SCU在室期間の1日当たりのリハ実施単位数、合併症の発生数、当院退院時の転帰とし、電子カルテより後方視的に調査した。 統計方法は、1日当たりのリハ実施単位数はt検定(P<0.05)、mRS 、NIHSS、FIM、上田式12段階片麻痺機能検査、SCU在室日数、在院日数はマンホイットニーのu検定、合併症、退院時の転帰はカイ2乗検定を用いた。なお、マンホイットニーのu検定とカイ2乗検定はBonferroni の補正を行い、危険率はそれぞれP<0.006、P<0.025とした。【倫理的配慮、説明と同意】 当研究を行うに当り、個人を特定するような情報は提示しないよう配慮をして行った。【結果】 SCUでの1日当たりのリハ実施単位数は、3.6±1.2単位(PT1.8単位、OT0.9単位、ST0.9単位)/6.1±1.3単位(PT2.4単位、OT2.0単位、ST1.7単位)で、B群の単位数が有意に多いことを認めた。また合併症を有したものは、18 例(不眠2名・せん妄7名・誤嚥性肺炎5名・関節炎3名・転倒0名・褥瘡2名・深部静脈血栓症0名)/14例(不眠0名・せん妄5名・誤嚥性肺炎7名・関節炎1名・転倒0名・褥瘡0名・深部静脈血栓症1名)で、B群において有意に低いことを認めた。その他の調査項目については2群間に有意な差は認めなかった。【考察】 SCU在室期間中の1日当たりのリハ実施量を、3.6単位(PT1.8単位、OT0.9単位、ST0.9単位)から6.1単位(PT2.4単位、OT2.0単位、ST1.7単位)に増加し、早期からのリハ介入の充実を図ったが、急性期病院退院時の運動機能や日常生活活動に与える影響に有意な差はなく、SUや当院退院後の継続したリハビリテーションが重要と考える。 合併症の発生数は、B群が有意に少ない結果を得た。これはSCU在室期間内のリハ実施単位数を増加したことで、刺激入力や離床機会の確保など、リハ実施量が増えた結果と考える。また専任セラピストの配置を充実させ、他職種との連携を高めたことも合併症の発生予防に繋がったと考える。 本邦においては急性期リハの充実が求められており、今回の結果は急性期脳卒中患者のリハビリテーションを実施する上で、早期からの集中的リハの重要性を示す有用な因子と考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究はSCU在室期間内で、リハ実施量を増加させ、また他職種との連携を充実させることが合併症の発生予防に効果的であり、急性期リハの効果を示すエビデンスの一つと考える。