脳血管障害例における10m歩行テストと屋内歩行自立日の予測との関係
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概要
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【目的】脳血管障害患者における屋内歩行自立日の予測式を検討した.<BR>【方法】2006年9月から2007年10月までの期間にA病院入院の脳血管障害患者のうち、除外基準に従って選択していった結果、112例(男性70例、女性42例、脳梗塞76例、脳出血36例、左麻痺62例、右麻痺50例、平均年齢65.9±10.5歳)を対象とした.除外基準は発症前Activities of Daily Living(ADL)にて屋内歩行が介助、重度の整形外科疾患や失語症、Timed Up and Go Test(TUG)や10m歩行時間が測定不可、訓練中止、くも膜下出血、退院時に屋内歩行が非自立、研究の主旨に同意しない者とした.調査項目は年齢、性別、身長、体重、疾患、麻痺側、発症日、既往歴(脳血管障害)の有無、急性期(発症30日)の座位保持、立位保持、歩行状態(介助、非介助)、自立日とした.測定項目は下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)下肢位置覚、30秒間反復起立テスト、Functional Reach Test(FRT)、TUG、10m歩行時間、10m歩行歩数、Mini Mental State Examination(MMSE)、握力(非麻痺側、麻痺側)とした.測定日は発症15、30、45、60、75、90日のうち、TUGと10m歩行時間が測定可能な最短日とした.自立日の判定は自室内等の制限なしに病棟内を1人で転倒なく歩行可能と、PT2名が判定した日とした.<BR>【結果】各項目間のピアソンの相関係数を検討した結果、急性期の立位保持と相関が高い項目は急性期の座位保持(r=0.70 p<0.01)、急性期の歩行状態(r=0.66 p<0.01)であった.10m歩行時間と相関が高い項目はTUG(r=0.92 p<0.01)、10m歩行歩数(r=0.82 p<0.01)、自立日(r=0.68 p<0.01)であった.従属変数を発症から歩行自立までの日数とし、独立変数を多重共線性に配慮し、年齢、身長、疾患、麻痺側、既往歴、急性期の立位保持、下肢BRS、SIAS下肢位置覚、FRT、30秒間反復起立テスト、10m歩行時間、MMSE、握力として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.自立日の予測に影響する要因は第一に10m歩行時間、第二に急性期の立位保持、第三に下肢BRSが選択され、作成された予測式は「Y=0.789×10m歩行時間-25.595×急性期の立位保持-8.347×下肢BRS+97.862」であった.R <SUP>2</SUP>は0.575であった.<BR>【考察】歩行自立日の予測において特に10m歩行時間の有用性が示唆された.<BR>【まとめ】この予測式は主観的評価を客観的項目で表し、項目は誰でもどの環境でも利用可能である.そのため、本研究結果は入院期間設定等の一助になると考える.
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